全自動通勤ロボ
火曜日は顧客先に常駐しておくことになっている。
しかし、今日は充電ケーブルを忘れた。
決してわざとではない。
わじとではないが、いつか充電は切れてしまうので、しょうがないから午後から家へ帰ってリモートワークをすることにした。
お昼の日光を浴びることはそうないから、大変気分がいい。
電車に揺られながら、窓の外ををボケーっと眺めていると、ドンペンが目に入った。
ドンペンはドンキホーテのペンギンを模したキャラクターだ。
異常なほど、屋根が傾いたドンキホーテに、いまにも滑り落ちそうなドンペンがしがみついていた。
おそらく、電車から見られることを想定して、設置しているのだろう。
なんともユーモラスな意匠で可愛いと思った。
なぜ今まで気づかなかったのかと疑問に思った。何度もこの電車には乗っていて、気づくチャンスはいくらでもあったはずだ。
気づかなかったのは、満員の通勤電車をイライラしながらスマホを眺めて、横まで席を立ちそうな人を探すのに忙しいからだ。
窓の外なんてまるで興味がなかった。
朝の行動はルーティン化されていて、窓の外を見ることはルーティンには含まれていなかった。
毎日の通勤、毎日同じ景色。
しかし、一体どれほどのものを見過ごしているのだろうか。
全自動通勤ロボになってしまいがちだから、
たまには自動運転のスイッチを切って、
マニュアルで通勤しよう。