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ノンデスクワーカー向けSaaS開発・導入はこれがつらい!5選

クアンド下岡です。私たちは製造、建設、インフラ・交通などの現場で働く人に向けてリモートコラボレーションツール「SynQRemote(シンクリモート)」を提供しています。

今回は私たちが日々感じている「ノンデスクワーカー業界でSaaSを開発・導入する際のつらみ」について書きました。これから開発される方の参考になれば嬉しいです!

その1:現場の通信環境が悪い

4GやWifiなどの通信環境が整ったオフィス向けSaaSとは異なり、ノンデスクワーカー向けのSaaSは、山奥・海沿い・地下・高所など辺鄙(へんぴ)な場所で使われるケース多いです。

現場は文字よりも画像や動画を利用する場合が多く、送受信データの容量が大きいため、通信環境がダイレクトにサービス品質やユーザー体験に影響します。

有線でインターネット回線を引くこともできますが、相当なコストが発生するため、それをペイするだけの費用対効果を顧客に納得してもらう必要があり、非常に難易度が高いです。

画像や動画を圧縮して送ったり、オフラインでも利用できる機能を増やすなど、通信環境に依存しない設計が求められます。

その2:デバイスが古く、OSや機種がバラバラ

会社貸与の新型iPhoneを全社員が持っている会社は一部の超お金持ち企業だけです。多くの企業は古い型落ちのiPhoneや安価なAndroidを使用しています。iPod touchをwifiに繋いで使っている工場もありました!

パソコンも旧式の分厚いPCで、メモリもCPUも現在のクラウドサービスを使うには十分とは言えません。そして、厄介なのは全員のデバイスが統一されていないこと。OSバージョン、メーカー、機種が統一されてないので、トラブル発生時は毎回それらの情報を確認する必要があります。

特にコミュニケーションツールや業務ツールなど、全員が使うことで効果を発揮するサービスの場合は、全員が使えないと利用価値を感じてもらえないため、機種・OSの対応範囲を初期から広げる必要があります。

リリース初期は対応機種・OSを絞って改善のPDCAを素早く回したいところですが、一人でも使えないと導入してもらえない場合も多いので、非常に悩ましいポイントです。

私個人としては、利用可能なユーザーが少なくなったとしても対応機種・OSは絞った方がいいと感じてます。まずは5社の熱狂を作ることが重要であり、その5社は対応機種・OSを絞っても見つかるでしょう。(ちなみに弊社は初期の絞り込みができてませんでした)

その3:デジタル上ではない体験設計も重要

安全のため現場ではデバイスを手に持って歩けない、直射日光でスマホの画面が見にくい、長時間使い続けるのでバッテリーがもたない、防塵防水仕様でないと使えない、軍手をしたままスマホを使うことも多いなど、現場特有の制約条件が多く存在します。

オンライン上での体験もさることながら、オフラインも含めた体験設計が重要です。現場特有の課題に対して一つ一つ乗り越えて行く根気が求められます。

その4:サポートは電話メイン

現場の人はとにかく電話を頻繫に利用します。メールで済みそうな簡単な問合せもカスタマーサポートに頻繁に電話がかかってきます。メールだけでは失礼だと考えている方も多いようで、メールを送った直後に電話がかかってくる場合もあります。

CSの業務が電話対応だけで終わってしまわないように工夫が必要です。私たちは、SaaSの利用料金とは別にCSサポートも月額課金プランを設けて、プランごとにサポート内容を変えています。手厚くケアして欲しい人にはしっかりと費用を頂いてケアし、リーズナブルに済ませたい方は最低限のサポートでやっていただく。現状、うまく機能しています。

その5:導入までのリードタイムが長い(エンプラ)

現場系エンタープライズ企業でリードタイムが特に長くなるプロセスは「導入現場の選定」「セキュリティチェック」あたりかなと思います。

現場で働く人たちの意見が強い企業においては、SaaS導入を推進する上司や他部署は、余計な時間や手間を現場に取らせないように細心の注意を払います。導入時期、事前準備、評価プロセスなど、慎重な根回しや準備が重要なことから、諸々の調整に時間を要します。

毎回負担が大きい「セキュリティチェックシート」もリードタイムを長くする原因です。特に、製造業やインフラなど機密情報を持つ現場では情報の取り扱いに厳しく、多要素認証や権限管理などが求められます。子会社や孫会社は親会社のセキュリティ要件をクリアする必要があるため、セキュリティチェックシートの審査・許可に数か月かかる場合もあります。

セキュリティチェックはConorisというサービスの評判が良いらしいので、弊社でも今後使ってみようと思ってます(回し者ではありません)。


このように現場SaaSには現場特有の難しさ、苦労があります。しかしながら、現場SaaSにはこの辛さを数百倍返せる楽しさと意義があります!気になった方は是非このnoteも読んでみてください。

現場からは以上です!

QUANDO CEO。九州工業大学 客員准教授。建設設備会社瀬登 取締役。地方でのスタートアップ、事業承継、大学発ベンチャーについて書いていきます。