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【シリーズ】令和のKCS【1】


令和のKCSシリーズを開始

HDIアカデミー 2023のセミナーを『令和のKCS シリーズ』として編集したものの第一弾です。

本編のスライドは120ページほどあり、改めて読み返して『こんな長いスライドのニーズは世の中になさそうだ』と思い直し、コンパクト版(ちょっとコミカル版)としてnoteにまとめていくことにしました。120ページ中10ページ分くらいの内容です。

本編のスライドは、本記事の最後にリンクを張っておきますので、興味があるという方はぜひ御覧ください。メールアドレス等の登録とかなしにご覧いただけます。もし、質問やご意見があれば、X(旧ツイッター)か、eight、LinkedIn経由でいつでもご連絡ください。

第1弾noteは『令和のKCSとは?』について

そもそもKCSとはなんですか?という方もいらっしゃるかもしれません。(そういう方はこの記事をクリックしない気がしますが)

KCS(Knowledge Centered Service)とは、ナレッジセンターサービスとカタカナで表現されたりしますが、コールセンター・コンタクトセンターでのナレッジ運用をモデル化したものです。米国のNPO団体「サービスイノベーションコンソーシアム」が10年を要して実証実験を繰り返し完成させたもので、日本でも導入が進みつつあるモデルです。

まずは、KCSはどのように運用されるのか?というをまずは簡単に振り返りたいと思います。

KCS ダブルループ プロセスを見つめる

あまり雑に説明すると怒られそうですが、ダブルループプロセスというかたちでフレームワーク化されています。

ダブルのうちの一つは、実際に顧客対応やカスタマーサポートをする方々(オペレータ、エージェント、コミュニケーターなど呼び方は様々ですが個人レベル)に関する業務プロセスです。(下図の右側)

もう一つは、発展ループと位置づけられ、チームや組織レベル(センター長、SV、リーダークラスがメインで担当する)での業務プロセスを指します。(上図の左側)

KCSダブルループプロセスのフレームワークは、「問題解決と知識の成長を通じて良いサイクルを回す」という意味を持っています。具体的に言い換えると、「問題解決サイクルと知識成長サイクルを繰り返すことで、組織全体のパフォーマンスを向上させよう」という意味になります。

これら2つのサイクルを活用することで、個々の人は問題を解決するためのスキルを磨き上げ、さらに新たな知識を得ることが可能となります。そして、その新たな知識を組織全体で利用することによって、全体の品質の向上や業務効率の増大が達成できます。(理想論)

つまり、「個人の問題解決力の向上と新知識の獲得を通じて、組織全体の質と効率を高める」がこのフレームワークの目指すところです。

この本質・理想は、実は『令和のKCS』でも変わらないものとなります。

では、何が変わるんじゃい、という話ですが、少し具体的にダブルループの中身をみていきます。

ダブルループの中身をみつめる

ダブルループは8つ要素で構成されています。それぞれの大項目としての定義はわりと普遍的で、状況や環境によっての影響をそれほど受けないと思います。しかし、それぞれの要素で、具体的にどのように日本のコールセンター・コンタクトセンターの現場で捉えられ、活用されているか?まで落とし込むと徐々に怪しくなってきます。

まずは、解決ループの詳細を見ていきましょう。①ナレッジを捉える、②構造化する、③再利用する、④改善するの流れになります。(下図参考)

完全に余談ですが、番号は便宜上私のほうで勝手に付けています。どこが1番最初か?にはいろいろな意見があるかなと思いますが、一旦ご了承ください。

解決ループの特徴は、まず困りごとを把握し、それにあったコンテンツをつくる/利用し、改善していく、というのが大まかな流れとなります。

次に、発展ループの概略です。こちらは、⑤コンテンツを健全に保つ、⑥プロセスを統合する、⑦パフォーマンスを評価する、⑧リーダーシップ、というような流れです。(下図参照)

以上の8つタスクを定義しているのがKCS ダブルループの基本です。一方、令和のKCSの観点から見た際に、本質的には変わっていないがタスク単位で見ると変えた方がよりKCSの本質を捉えていることになっているポイントがでてきます。

時代が変化し、自社が変化しないことで思わぬ位置にポジション(変化)していることはよくあります。

KCSタスクを変化させていないがために、KCSの本質から遠ざかってしまっているかもしれないことが起きているということです。

少し見ていきましょう。

もしかしたら、それって昭和のKCSかも?

KCS ダブルループプロセスをどのように現場の業務プロセスに組み込んでいるのか?はその企業独自のものであると思います。

そのため、KCSを採用しているすべての企業が時代遅れになっているわけではありません。もしかしたら、知らない間に時代遅れになっているかもしれない、という健康診断的な意味合いで見届けていただけると嬉しいです。

それでは、3つほど、よくある時代遅れの例を見ていきます。

まず1つ目は、『強制的にナレッジを使え!』と命令だけしていませんか?というものです。(下図)

これは、KCS ダブルループプロセスのよくある落とし穴なのですが、『ナレッジを中心に据えるオペレーション』や『わかっていることを確認することにもナレッジを利用する』や『ナレッジの利用記録自体がコンタクトリーズンの記録にもなり、AHT(1件の顧客応対にかかる時間)の生産性が向上する』というKCSの特徴の、悪いところだけ真似てみたパターンで起きます。

様々な効果を生む前提として、業務でナレッジを使う、というのは基本中の基本です。ただ、これは前提でもありゴールでもあります。業務プロセスでナレッジを使うことが難しいからこそ、8のタスクを整理し、2つのループを定義しているといえます。

それだけ、一朝一夕にはいかないからこそ、とりあえずの『強制的に使え!』は完全に悪手になります。

そのような強制的にナレッジを使え!という現場で何が起こるか、ナレッジ活用を単純にCRMソフト上のプルダウンで上の方のよくあるナレッジを見たことにして記録だけしておく、なんてことが定常化してしまったりします。

その場合、コンタクトリーズンの把握も正確にはできませんし、ナレッジが磨かれることもありません。

ナレッジの強制利用だけを推進していると、完全に時代遅れになっているかもしれません。

2つ目は、問い合わせから顧客の問題を把握するプロセスが、電話応対だけを想定して作られているケースです。

もちろん、現在も電話チャネルの問い合わせしかない場合は問題ありません。しかし、他のチャネル、メール対応やチャット対応をしている場合は要注意です。

お客様の困りごとを正確に切り分けする方法は、電話対応時とそれ以外では随分と異なります。また、メールとチャットでも異なります。

自社のカスタマーサポートのチャネルが増えているにも関わらず、電話以外のチャネルのナレッジに、電話中心のナレッジを工夫なくそのまま活用していると、時代遅れの可能性が高いといえます。

最後は、『ナレッジ担当者だけがコンテンツをつくる』です。

KCSでは、ナレッジの専任担当を置きましょうと定義しています。ただ、これは『ナレッジの専任担当だけで、ナレッジをつくりましょう』という意味ではありません。

最新のナレッジや質の高いナレッジは、顧客応対の現場で創意工夫して磨かれていくものです。

現場で創発可能、改善可能、な状況をつくることが非常に重要です。特に、企業側のサービスが複雑化し、顧客ニーズも細分化されている昨今の状況を鑑みると、中央集権的にナレッジをつくって配布、という運用は実践的とはいえません。

いかがでしたでしょうか?

3つのうち1つでも心当たりがあれば、改善の余地は大いにあり!ということで前向きに捉えていただけると嬉しいです。

令和のKCSの要素とは?

昭和かもなKCSを紹介させていただきました。一方、令和のKCSはどうなのか?という点ですが、シンプルにその課題を克服するというもになります。簡単に3つのポイントをまとめて図にしておきました。(下図参照)

1つめは、強制利用→任意利用、です。

そんなことをすれば使わない人ばかりになってしまう!という声が聞こえてきそうですが、その場合は他に問題があるのでそちらの特定と課題設定をするほうが先です。

強制利用しなくてもみんなが使っている状態を目指しましょう。

もちろん、今、強制利用でうまくまわっているのであれば、プロセス変更する必要はありませんのであしからず。

2つめは、電話チャネル以外のチャネル向けのナレッジをつくる、です。

電話対応のナレッジと、デジタルチャネル(メール、チャットなど)の最大の違いは、質の高いナレッジの定義、です。電話応対時に活躍できるナレッジは、オペレーションする方の目線で読みやすいかどうかが重要ですが、デジタルチャネルの場合は、そのナレッジを返信文に活用していくので顧客にとって読みやすいか?が重要です。

KCSでいうところのコンテンツスタンダードそのものの再点検という意味でもあるので、自社の棚卸しをしてみるのもいいかもしれません。

3つめは、ナレッジ担当者だけがナレッジをつくるのではなく、全員参加を促しましょう、というものです。

こちらは言うは易しでなかなか難易度が高いですが、デジタルチャネルのナレッジ管理から開始するのは比較的やりやすいと感じています。

また、KCSダブルループでいうところの⑦パフォーマンスを評価する、という点においても影響を与えるかと思います。いいナレッジをつくった人の評価を正しく実行することが求められます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?第一弾をお読みいただき、ありがとうございました。令和のKCSを少しでも感じていただけたかなと思います。

ちょっと偉そうないいぶりになったかもしれませんが、正解は(まだ)ないと思っていますので、試行錯誤していきましょう。

加えて、KCSの理念やビジョンに1片の曇なし、とも思いますので、その前提でご理解いただけたら嬉しいです。

また、HDIアカデミーでの120ページのスライドは以下のURLにございますのでご興味がある方はぜひ。リンクに飛んで、すぐにご覧いただけます。

スマートフォンでは、少しスライドが崩れます。ご了承ください。

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そもそもKCSとは?の基本的に記事

当社、カラクリのコラムで以下のような記事もまとめております。KCSを知りたい方は、合わせて参考にしていただければと思います。こちも第6回までありますので盛りだくさんですが、お時間あるときに。


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