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ぼーろランドへようこそ


歓迎 という言葉がある。

歓んで御迎えする

人生で熱い歓迎を受ける回数は、そんなに多くない方だった。


歓迎された、と自覚した事が少ないのかもしれない。


今回は、歓迎するという人の心の美しさをたっぷり堪能させて頂いた体験をした。


ぼーろランドに迷い込んだのである。


ぼーろランドとは、作家の拝啓あんこぼーろと、ぼーろランドの超絶需要キャラクター、マッキーマウス(仮)がいる場所の事だ。

隠れキャラでピースという、出会うといいことが起こる縁起物もいる。

ここの入り口には、チケット代はないのだが、うっかりパスポートというのがあって、うっかり遊びに来た人が迷い込むシステムになっている。

私と妹は、作者ぼーろの『ドラッグストア昔話』という作品が好きすぎて、うっかり遊びに行ってしまった。

ぼーろ氏は、いわゆる作家だと思っていたら、なんとぼーろランドを設計するほどの夢のクリエイターだった。


私たちは知らぬ間にぼーろランドの、ドラッグストア昔話タウンに迷い込んでいたらしい。


到着すると、マッキーマウスがトコトコトコ、と、玄関から出て来て歓迎してくれた。

初めて会った一言目が、

あ、もう涙出そう🥲

と言うではないか。

初対面で抱き締めたら警戒されるかもしれないし、純真無垢なマッキーを傷つけてしまうかもしれないから中年女性としてそこはグッと堪えた。私が小学生なら抱きついてお母さんに写真を撮ってもらったろうに。


そしてそこに出てきたぼーろ氏。

初対面なのに、知ってる人だった。


もちろん文通を重ねたからかもしれない。

が、まぁここでは話せないとある場面で私はこの人に会っていたことを悟った。


お宅に上がらせて頂く。


美しい、シンプルな懐紙に、美しい干し柿が登場する。


干し柿マイスターでもあるぼーろ氏は、私たちの胃袋の大きさと好みの固さに合わせた干し柿を選び、スッと出した。


まぁお茶でも飲んであったまって下さい。


そして出てきたのは、薄茶であった。

新鮮な抹茶を用意し、その場でお茶を立ててくださったのだ。


この運びの中で、


人見知るとか、警戒する、緊張する

と言った波動が届かない場所に引き上げられてしまい、私たちの中には

和み


が波紋のように広がった。


その後、4人でお昼を食べに向かう。


先程のウェルカム儀式によって完全に心を預けた私と妹は、

今日の予定とか、どこに向かっているかとか、一言も尋ねない。

委ねればいいのだと、悟ったからだ。


そうやって連れて来られたのは、

餃子の美味しいお店だった。


近年のぼーろファンならご存知かもしれない、あの素敵なおじさんがやってる中華屋さんだ。

あ!あの!あれですね!


ぼーろ氏にお先にどうぞと促され、自動ドアの前に立つ。

ドアが開くと、優しい笑顔のご夫妻がいた。



いらっしゃい。よく来たね。


笑顔によく合う優しい声。


声が聴けて、私の喜びは倍増する。


そして、
辛味餃子の定食を頼んだ。


少食姉妹の私たちは量を聞かないと幾つ頼むか判断できない。

餃子一人前はいくつですか?
-6個ですよ。

優しい笑みのおばさんが答える。

ならば一人前ずつ食べられそうだ、と、4人前頼む。唐揚げも頼む。


はいよ~!美味しいの作るから待っててね~!


おじさんの優しい声がぎりぎりの音量で私の耳に届く。


唐揚げが先に来る。
柔らかい。優しい。
美味しさの中の愛情がすぐさま全身に廻る。


餃子定食が来る。


どう見ても6個じゃない。

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体感的には18個くらいに見えた。

ぼーろ氏にも10個くらい、マッキーマウスやなんてね(妹)には8個くらい。

6個 という単位が各々のパラレルワールドに迷い込んだ。


皆で美味しいものを共有して、すでに初対面タイムは遠い昔となり、次へ向かった。

そこは、かつての城下町。


わたしにとっては大切な思い出の場所、7年ぶり。

心躍った。

7年前に初めてのカブ旅で帰りに寄った町のひとつだったのだ。

綺麗な水の用水が流れる町。

鯉に餌でもやりましょう。と、用水路の石畳へ向かう。

建物にも風情が残っている。

あれが郭ですかね、あ、ちがうのかな、なんて、どことなくあのお話を重ねたりして散歩する。

久々にのぞく用水路。鯉たちは、その概念を塗り替えるほど巨大で、妹とワーワー驚く。そんな鯉に夢中な私たちに、ぼーろ氏が声をかけた。


手を出してください。


私たちの手に、ぽとりと、ちいさな和紙の包みが渡される。



あ!!!!!!!



わたしはすぐさまこの景色に驚く。


裏路地。 石畳。




ほら、手出せよ、手。ほら、出せって、手、出せよ


頭の中にもう一人男性が現れる。

善さん・・・・・!!!!


私はえ!あ!え!え~~~!

みたいな確か驚きながら急いで和紙の小さな包みを開けた。


「そしたらさ、和紙の小さな包みが手のひらにぽとりって落ちてきてさ、首をかしげたら、あけてみろって善さんが言うの。その白い和紙の包みを開くとさ、」
「なんだよ、銭か?」
「んもう、違うよ、夢がないなぁ、ほんとに同一人物?でね、その包みをゆっくり開いたらさ、」

頭の中で物語が響く


そこには、



雪椿の有平糖。


現実の中に、物語が立ち現れ始めた。


ようこそ、ぼーろランドへ。




つづく





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