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ニューヨークで誕生日

かっこよさそうだし、何か起こりそうだけど、すごく私らしい、静かな日の話。

私にとって雨と6月は誕生月の季語みたいなもので、みんなが中間テスト間近に追われる頃いつもひっそりと歳を重ねていた。

2018年は特別な誕生日だったのかもしれない。


一念発起なのか衝動なのか、演技の勉強をしにニューヨークのステラ・アドラー・アクティングスタジオへ、夏季の夜間入門講座を受けに行った。

観光ビザ3ヶ月ギリギリの10週間コースだったので、6月〜8月のコース。


20年も役者やったのに入門コースにしたのは、自力で使える英語ではシェイクスピアクラスと即興クラスは限界を感じていたので、それがないクラスにしたのだった。

夏は海外からの留学生が多いと踏んで行ったものの、夜間クラスは例外で、私以外はバリバリ昼間は働いているニューヨーカーの集まるクラスだった。


クラスが終わると22時半くらいなのでみんな明日の仕事のためにさっさと帰る。結果、クラスメイトと親睦を深めることが難しかった。

それでも地下鉄が同じ方向の仲間が数人いて、まだ始まって間もないクラスのクラスメイトたちに、明日は私の誕生日だけど一人ディナーなんだよねと話すと、ユダヤ人で家族想いのゲイブが、誕生日を1人で過ごすなんて!と、夕飯に付き合ってくれることになった。


因みにこの時期からのニューヨークは、毎日雨が降る。

1日のどこかでザーっと降り、ちょっと涼しい夜を迎えることが多い。

この日もそんな感じで、濡れたアスファルトがまだキラキラと光る頃、ゲイブと私は店の前で落ち合った。


2人で行ったのは、私がニューヨークに行ったら行きたかった、KATZS(カッツ)。


ニューヨーク育ちの友達に絶対行ってこいと言われていたお店だ。


パストラミサンドが絶品なのである。

美味しそうな写真はこちらからどうぞ↓

お店に入ると人気店で当時はこんな感じ。

平日とは思えない賑わいで、壁には有名人が来た写真が貼ってある。
大人気食堂。ユダヤ系の料理らしい。初めてユダヤ系の料理があることも知った。
これがまたすごく美味しい。
熟成した柔らかいパストラミが何層も入ったサンドイッチをほうばる。

半分はお持ち帰りにした。


チキンカツにマッシュポテトのソースが載ったものも美味しかった。


賑やかな場所で英語を聴き取るのは中々の慣れが必要だけど、幸いゲイブの英語は聴きやすく、2人で色んな話をした。何故芝居を始めたのか、何故このスタジオにしたのか、日本にもユダヤと縁深い文化があるよ、などなど…


食後はリトルイタリーのレストランでコーヒーを飲み、またクラスで!と別れた。


ゲイブは最後までいい奴で、最終クラスの後の飲み会が終わり、帰る時に私に声をかけるために追いかけて来てくれた。


そんなゲイブはこちらです。


海外に行くと、とてつもなく1人を感じる。良きも悪しきも。はじめての海外での誕生日という体験をあったかくしてくれた彼のことを、私はこれからも忘れないんだろうなぁ、と思う。




そんな思い出のかけらを、こちらの企画に投稿させていただきます。


#雨と6月とワタシ



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