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【実はディストピア?】ちいかわを考察&推測してみた【謎多き世界】

あなたは『ちいかわ』という存在を知っているだろうか。
ちいかわとはTwitterに不定期に投稿される1P漫画に登場するキャラクターのことである。

公式のフォロワー数は約39万人、漫画のリツイート数は数万越え(2021/1/9時点)、漫画が更新されると高確率でトレンド入りするという凄まじい人気を博している。

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去年は森永製菓とのコラボも行われ、2月にはPOP UP SHOPの開催と、初の単行本も発売される『ちいかわ』
筆者もすっかりちいかわの魅力にハマってしまった。

ちいかわは何故ここまで人を惹きつけるのか?

そこには可愛らしさだけではない魅力があると思う。ここでは謎多きちいかわの世界を考察するとともに人気の魅力なども語っていきたい。

【ちいかわとは何か?作者は?】

ちいかわとは『なんか小さくてかわいいやつ』の略称。

どこから生まれてどういう生き物なのか具体的な説明はないが、初期のTweetなどを見る限り、人間のこういう風になってくらしたいという願いを具現化させた存在と考えられる。

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作者は日本のイラストレーターのナガノさん。(公式Twitter)

イラストレーターとしての活動は、ちいかわだけでなく地方のゆるキャラやポケットモンスターのコラボなど多岐にわたる。

特にナガノさんの担当した『自分ツッコミぐま』は、LINEのクリエイターズスタンプのランキングで1位を獲得するなど、その人気は高い。漫画も連載しているので、見かけたことがあるという人も多いのではないだろうか。

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ちいかわのアカウントが開設したのは2020年の1月

当初は物語的な繋がりを感じさせるものではなく、単発の漫画が投稿されるのみだった(この頃の主要キャラはちいかわとウサギ)。

こちらの記事でも言及されているが、(ねとらぼ様記事参照)ちいかわと人気を二分するといっても過言ではないキャラクター「ハチワレ」が登場したことをキッカケに、徐々にストーリー性が増してくる。

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自分が思うに、ちいかわの世界が広がったのは「ハチワレが話せるキャラクター」だったことが大きいと思う

ハチワレはちいかわの新しい仲間というだけでなく、ちいかわを理解し気持ちを代弁する役割を担っているようにも見える。

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【可愛いだけでなく、恐怖やシビアな現実が存在するちいかわの世界】

ちいかわは1年足らずという短い期間で、何故ここまでの人気になったのか?

まずは「ちいかわ達の可愛らしさ」が挙げられるだろう。ちいかわ=なんか小さくてかわいいやつ、という名前だけあって可愛らしさが凄い。

下に挙げたような姿を見ているだけで、その愛くるしい姿に胸を締め付けられてしまう。

Twitterやインスタのコメントなどを見ても、ちいかわが好きな人のほとんどは、ちいかわ達の可愛さに魅力を感じているように思える。

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だが、ちいかわを読んでいる方ならご存じだろうが、ちいかわは可愛いだけの作品ではない。

ちいかわの世界は一見ほのぼのとした世界観に見えるが、読み進めていくと胸が締め付けられるエピソードや、ホラーかと思うようなエピソードがある。

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上に載せたのは、自分が最も絶望を感じたエピソード。

巨大な穴に落ちてしまったハチワレが助けを求めているという衝撃的な始まり方をする。

それまでも恐怖を感じさせるエピソードはあったが、このエピソードは出だしからして死を感じさせる不条理かつスリリングな展開。

このエピソード以降、自分はちいかわ達が何かをはじめるたび「今回は大丈夫なんだろうか」と心配する気持ちが生まれてしまった。

他にも、ちいかわとハチワレが同じ試験を受けて片方だけが受かってしまうというエピソードや、願いの叶うステッキらしきものを使ったら身体が変貌してしまうエピソードなど、読む人をハラハラさせたり、気持ちを抉るようなエピソードが突然出てくる。

ほのぼのとした世界観の中に、まるで地雷のように毒が潜まれているのだ

また、読み進めていくとちいかわの住む世界のシビアさが分かってくる。

まず、ちいかわの友達ハチワレが住んでいる家はほら穴(しかも扉もない)。ちいかわは一戸建ての家に住んでいるが、それもヨーグルトのキャンペーン懸賞に当たったものだ。

それとちいかわ達は肉体労働をしてお金を稼いでいる。

しかも定職に就いているのではなく、その日暮らしのようなのだ。

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仕事の内容は草むしりやシール貼り、キノコ採集(夜勤)そして討伐?といった単純かつ肉体労働のものばかり。

仕事は早い者勝ちというまるでドヤ街を思わせるような光景も描かれている。

そもそもちいかわ達って親とかはどうなっているんだという問題もある。

ちいかわとハチワレは労働でお金を稼いでいる場面が描かれるが、ウサギはどのような生活をしているのかも謎。

ちいかわ世界の特徴としてちいかわの世界が全体的にふわっと描かれているという点が挙げられる。

ちいかわのような可愛いキャラクターでも労働をしている描写自体は珍しくはない。だが、見てて生活を心配させるような描写は普通出てこない、だからこそこの世知辛さは意外。

ちいかわ達の平均年収がいくらぐらいかは分からないが、レストランの値段に驚いてる場面などを見る限り、ちいかわの世界にも貧富の差がありちいかわ自身は裕福な立場ではないということが推測できる。

さらに、ちいかわが住んでるエリアには毎朝定時にラジオ体操が行われるような、管理社会を思わせる描写がある。

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大変愛くるしいちいかわ達だが、実はちいかわの日常は危険と隣り合わせである。

特に分かり易いのが下のエピソード。

ちいかわとハチワレが立ち寄ったレストランで、謎の化け物に食べられそうになるというエピソードだ(このエピソード自体は、宮沢賢治の『注文の多い料理店』を連想させる)。

上に挙げた穴のエピソードと同じく、ちいかわには死を連想させるようなエピソードが多数出てくる。

身体を乗っ取られそうになる、ハチワレの家に怪物が現れるなど、ちいかわ達が危険に巻き込まれるエピソードが多数ある。

この怪物たちがどんな存在か?ということも疑問ではあるが、ちいかわ達が住んでる世界(少なくともちいかわ達が住んでるようなエリア)は、警察などがいない国家なのかもしれない。

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【現時点で推測されるちいかわ社会の構造】
・貧富の差がある
・管理社会
・危険と隣り合わせの日常

筆者が思うにちいかわの魅力は可愛らしい世界観だけでなく、不条理かつスリリングな展開や、胸を締め付けるような現実のシビアさといったギャップにあるのではないだろうか。

ちいかわ達が、可愛く弱き存在だからこそ、読む手はよりハラハラさせられるし、そのギャップにより萌えるのではないだろうか。

まどマギすみっコぐらし (1)

可愛さと相反する要素がギャップになっている作品は、ちいかわ以外にも存在する。

可愛らしい魔法少女アニメと思いきや残酷な展開で視聴者の度肝を抜いた『魔法少女まどか☆マギカ』(2011年)や、可愛いだけじゃなく世知辛さも感じさせる『すみっコぐらし』などいずれも多大な人気を博した作品だ。

ちいかわの人気を考えると、今の時代は可愛いだけではなく、何か相反する要素を入れた作品が多くの人の心を掴むのかもしれない。そんな風にも思えてくるのだ。

【ちいかわの魅力】
・キャラクター達の可愛らしさ
・キャラクター同士の関係性(主にちいかわとハチワレ)
【ギャップとしての魅力】
・世知辛さ(試験エピソードなど胸が痛くなるシビアな現実)
・不条理、スリリングな展開(いきなり襲われたり、体を乗っ取られそうになるなどの恐怖)

ここまでちいかわの世界観の謎と魅力について語ってきたが、ちいかわの魅力を語るうえで、もう一つ語りたいのが『嗜虐性』という要素だ。

この要素に関してはナガノさんの作風と交えながら次の項目で語っていきたいと思う。

【可哀想だけど可愛らしい!作品に漂う嗜虐性とナガノさん作風について】

これもちいかわの魅力の一つと考えられるだろうというのが、作品に漂う嗜虐性である。ちなみに嗜虐性については下記参照(デジタル大辞泉参照)

嗜虐性=人や動物に対して苦痛を与えることを好むこと。むごたらしい行為を好む性癖。

ちいかわには、読み手の嗜虐性をくすぐるようなエピソードが多いのも特徴的。

ちいかわは、よく泣いてしまうキャラクターだが、印象的だったエピソードとしてこちらを紹介したい。

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ハチワレのサスマタに憧れて色違いのモノを購入したちいかわ。

ハチワレと仲良くサスマタの練習をしていると突然怪物が現れる。

ハチワレの活躍によって怪物は撃退できたものの、おろおろして何もできなかった自分に対する思いで嗚咽してしまうちいかわ。

ちいかわの中でも屈指の名エピソードだ(そもそも自宅に怪物が突然現れるのもヤバいが)。

こうした理想と現実のギャップにうちのめされるというのは、私達の人生でも一度は経験するであろう。

だからこそ、この時のちいかわには充分共感してしまう。

ちいかわドヤ顔 (1)
この表情の変化っぷりが堪らない…

それまでの勇ましいドヤ顔から一転、自分の力の無さに嗚咽する姿は読み手の胸を締め付けるのだが、それと同時にその姿に思わず悶えしまうような興奮する気持ちもある。

可哀想なのに可愛いという矛盾した感情である。

これが上述した嗜虐性なのだろう。ちいかわは人一倍怯えやすく、打たれ弱い性格なので多くのエピソードで涙ぐむ。それは普通のファンタジーキャラクターとは明らかに一線を画している。

しかし、ここで一つの疑問が湧いてくる。何故ちいかわはよく泣くのか?言い換えれば、何故ナガノさんはここまでちいかわの泣き顔を描くのか?という疑問だ。

この疑問を調べるためにナガノさんのこれまでの経歴、作品に対する考え方を掘り下げてみた。

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上述したようにナガノさんの作品は、ちいかわ以外にLINEスタンプの『自分ツッコミぐま』や漫画の『MOGUMOGU食べ歩きくま』などがある。

その中で筆者が紹介したいのは『自分ツッコミくまの本 もぐらコロッケのうた』

こちらはTwitterで不定期連載していたクマやもぐらコロッケを主人公としたエピソードを収録したもの。

こちらも基本はほのぼのとした世界観だが、時おり不条理かつスリリングなエピソードが登場する。

そのたびに登場キャラクター達の怯えた顔や泣き顔が描かれている。また前述した『MOGUMOGU食べ歩きくま』内でもクマは何か美味しいモノを食べるたびに泣き顔が描かれるのだ(こちらは嬉し泣きではあるが)。

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こうしたエピソードを見る限り、怯えた姿や泣き顔を描くのはちいかわに限ったことではなく、ナガノさんの作品に共通する特徴=作風だということがわかる

どうしてこのような作風なのか?その疑問に対する答えは以下のインタビューから読み取ることができるだろう。

ナガノさんは、上記の記事(KAI-YOU様記事参照)内で、自身が影響を受けた漫画家として吉田戦車先生の名前を挙げている。

吉田戦車先生といえば、『伝染(うつ)るんです。』などの作品で知られる不条理逆の先駆者ともいえる存在。確かにナガノさんの作品の不条理さは吉田戦車作品に通ずるものがある。

また、自身のルーツとして子供の頃好きだった作品は、「淡々とした雰囲気の中にドキドキ感がある童話や絵本」と語っている。

その例として『おおかみと7匹の子やぎ』やピーター・ラビットの『ひげのサムエルのおはなし』を挙げているが、どちらの内容も上記で挙げたちいかわ達が三ツ星レストランで食べられる話に共通する部分がある。

作風について様々な要因が伺えるが、注目したいのが以下の部分。

あまり深い意味はないのですが、カマキリのメスがオスを食べてしまう、みたいな生き物ならではの容赦のなさが好きなところがあるので、そういった生き物らしさを描きたい気持ちがあるのかも知れません。

『生き物ならではの容赦なさが好き』という事を踏まえてちいかわの世界をを振り返ると、ちいかわが理不尽な目にあったりシビアに思える展開にも納得がいく。

もう一つのインタビュー記事(ファミ通.com様参照)にも注目したい。

こちらはナガノさんが子供のころ好きだった、思い出に残ったゲームについて語ってるコラムだが、その中で紹介しているのが『どこでもいっしょ』(1999年)の追加ディスク、『こねこもいっしょ』(2000年発売)

『どこでもいっしょ』は、ポケットピープル、通称『ポケピ』と呼ばれるゲーム内のキャラクターとのコミュニケーションを楽しむゲーム。その中での印象的なエピソードがこちら。(詳しくは上記リンク先参照)

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ゲーム内のキャラクターが泣いたり落ち込んだりする姿に悶えるナガノさん。その姿が見たいために、いじわるな回答を選んでしまう。

本人も語っているが、この歪んだ愛情表現、これこそが上記で挙げた嗜虐性といえるし、ちいかわの作風に通じるものなのではないだろうか。

そして、この嗜虐性はナガノさんだけに限らず、筆者を含むちいかわを好きな人達の中にも一定層いるのだろう。

そうした人達がちいかわの人気を支えてる要因の一つではないかと思える。

【更新されるごとに拡がるちいかわの世界】

ということで、ここまでいかがだっただろうか。ちいかわの世界の謎、魅力について筆者なりに語ってみたが、あくまでちいかわ好きのたわごと。

面白く読んで頂けたら幸いです。ここで色々ちいかわの世界についても推測してみたけど、ちいかわは謎多き世界。それだけに更新されるたびに新しい発見や驚きがある、それもちいかわの魅力ともいえる。

ちいかわを読んだことがなくて、興味を持った方は是非、この機会にちいかわをチェックしてみてほしい。それがちいかわのいちファンとしての気持ちである。

2021/2/15追記:【雑記】ちいかわ東京ステーションに行ってきた【感想レポ】

東京駅で行われたちいかわイベントの様子を記事にまとめました。興味ある人は是非。

2021/5/13追記分:【謎多き伏線と】ちいかわを考察するVol.2【キャラクター達】

モモンガやヨロイさん、現在の展開などについてまとめました。こちらも興味ある方は是非。

2022/9/27追記分:【作品から読み解く】ちいかわを考察するVol.3【謎と作風】

「あのこ」による共食い事件や資格からよみとくちいかわ世界。また、作者のナガノ先生の作風について考察しています。


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