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自然と笑顔が生まれる空間を

こんにちは。2022年3月からSHIMOKITA COLLEGEで生活している、2期生の久我優衣奈です。ここで1番台所を使っているのは私だと断言できる程、SHIMOKITA COLLEGEの施設にはお世話になっています。

食べることが大好きな両親の下で育った私は、幼い頃から美味しい物を探すことに全力を注いできました。小学校に上がる前には料理を始め、高学年になる頃には家族の食事の大半を担当するように。私にとって、家族の「美味しいね」の声は、他のどのような褒め言葉よりも、贈り物よりも、嬉しいものでした。疲れていても、辛いことがあっても、その言葉を聞くだけで、元気になれた。他人を笑顔にできる食べ物のそのパワーに魅了されて、私は、暇さえあれば料理をしたりお菓子を作ったりしていました。

大変な経験も、料理を作ることで乗り越えてこられた

その後、高校生になった私は、高校生活の3年間を長野県軽井沢町にある全寮制のインターナショナルスクール、UWC ISAK Japanで過ごしました。コロナ禍で、週末も、長期休暇でさえもキャンパスに留まることを余儀なくされ、周りに娯楽施設も飲食店もない山の上に取り残された私たちにとって、残された唯一の楽しみは、美味しいものを食べることでした。初めは200グラムずつ買っていたクリームチーズも、次第に1000グラムになり、2000グラムになり、、、。私と同じように勉強に追い詰められている友人のために、私は、課題提出締め切り直前も、最終試験前日も、夜な夜なチーズケーキを作って、振る舞っていました。学校に隣接した森の中に友人を誘って、丸太に腰掛け温かい紅茶と共に焼き菓子を片手に対話をする束の間の休息は、私にとって何よりも幸せな時間でした。世界で最も大変な高校のカリキュラムだと言われることもある国際バカロレアを生き延びることができたのは、料理やお菓子を作ることで生まれた繋がりや喜びに支えられたからだと心から感じています。

森の中に机を設置して、温かいお茶と共にチーズケーキ


SHIMOKITA COLLEGEと出会って

2021年5月にUWC ISAK Japanを卒業して、次の4月に日本の大学を始めるまで、私はイギリスにあるUniversity College London (UCL)で神経科学を勉強することに決めました。初めてのヨーロッパでの生活に、初めての1人での生活。自分1人のために料理をして、自分1人で壁に向かって食べる。曇り空に、勉強の忙しさも相まって、あれ程大好きだったはずの料理も、苦痛になっていることに気付きました。9月末に渡英して、12月に入る頃には、自炊へのモチベーションを完全に失って、近くでお弁当を買って食べるように。私の生きる意味と言って良い程大切にしていた「食べる」ことは、次第に、生きるための手段としか意味をなさなくなっていました。イギリスでの生活を通して分かった、私は料理が好きなのではなくて、料理を通じて人と会話をしたり、人の笑顔を見たりするのが好きなのだという事。実家で家族と料理をしていた頃の、84ヵ国から集まる180人の友人と食卓を共にしていた頃の、あの高揚感をもう一度感じられる場所を。そう願って辿り着いたのがここ、SHIMOKITA COLLEGEでした。


SHIMOKITA COLLEGEに来て初めて本格的に料理をしたのは、UCLのオンライン試験の落ち着いた2022年の5月。沢山焼いたパンへの反応が嬉しくて、それからは、毎週末のように、食事の出ない週末に合わせてケークサレ(お惣菜パウンドケーキ)を作ったり、キッシュを焼いたり。次第に料理好きが認められ、大きなイベントの料理も任せていただけるようになりました。

SHIMOKITA COLLEGEのSlack上で、最も人気のある(?)"Free-Food-on-Campus"のチャンネル。


初めての大人数に向けて料理は、ハウスと呼ばれるランダムに割り当てられたグループでのヴィーガン料理(肉・魚・卵・乳製品を使わない料理)でした。

"Photo-album"のチャンネルには、毎日沢山の素敵な写真が並びます。


それからはまたハウスで十三夜に合わせて栗と大豆を取り入れた和食を作ったり、クラブクッキング(COLLEGEから活動予算が出る、部活のようなもの)に向けて鯛飯とマグロの煮付けを振る舞ったり。

十三夜当日には、厚揚げのきのこあんかけ、鮭ときのこの炊き込みご飯、さつまいもと油揚げの味噌汁、栗と林檎とひじきの白和え、柿と大根のなます、かぼちゃとクコノミのサラダ、トマトの塩麹漬けと秋の味覚を存分に取り入れ、お月見を楽しみました。
クラブクッキングの活動では、行きつけのスーパーであるオオゼキで1.5 kgのマグロを買って、
煮込むこと8時間。鯛飯には、愛媛県産の天然真鯛をふんだんに。


沢山頂いた機会の中でも特に思い出に残っているのは、11月6日のGood Life on Earth (GLE)メンバーや編入生に向けたウェルカムディナーと12月11日のTHE NORTH FACE × SHIMOKITA COLLEGEコラボイベントのヴィーガンディナーです。それぞれ当日の1週間以上前からメニューを考え、買い出しに行き、3日間一度も台所を離れず、座らずに料理を作り続けました。40人分の料理をほぼ1人で作るのは体力的にも辛かったものの、当日食べて下さった人の「美味しいね」の声を聞いた瞬間、疲れはどこかへ消えました。あの笑顔を思い出すだけで、今でも、SHIMOKITA COLLEGEに来てよかったと心から感じます。

ウェルカムディナーの料理。左上から順に、人参とグレープフルーツのラペ、ベーコンと枝豆とコーンのケークサレ、紫キャベツのマリネ、葡萄と梨のヨーグルトサラダ、イチジクと柿のカプレーゼ、ラザニア、チーズボール、鮭とキノコのペンネベイク、スペイン風オムレツ、生春巻き、アップルクランブル、かぼちゃプリンの品々。大人数に満足してもらえるようにメニューを考えました。
料理がずらりと並べられた長机を囲みながら、記念写真を。「早く撮って」の声が聞こえます。
THE NORTH FACE × SHIMOKITA COLLEGEコラボイベントのヴィーガンディナー。ウェルカムディナーの時の料理を思い出しながら、豆乳ヨーグルトや大豆ミート等の代替食品の力も借りて、メニューを考えました。追加でフムス、白菜の塩昆布サラダ、高野豆腐の唐揚げ、ブラウニーも。数ある料理の中でも、特に、大豆ミートを使った黒酢の酢豚風は大好評でした!

生きがいを与えてくれた仲間へ

誰かの喜ぶ顔を思い浮かべながら台所に立つ時間は、私にとっての宝物です。私にとっての生きがいを与えてくれたSHIMOKITA COLLEGEの仲間に、改めて感謝の意を。これからもよろしくね。

大切な人たちの記念日には、その人の好物を詰め込んだケーキを。

久我優衣奈

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