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オンライン大人数合唱ミックスのコツ

テレコーラスというイベントに携わり、158トラック・200名以上の声をミックスした動画を作成しました。その時の苦労話と気づきを書き残しておきたいと思います。

機材

PC:Mac book Pro 13 inch
DAW : Cubase Pro 10.5
オーディオIF:UR44

ミックスの流れ

1. トラックの開始位置調整
前奏を録音に入れてもらうようにお願いしていたので、原則伴奏音源とあわせ込んでいく形で開始位置の調整を行ないました。

スクリーンショット 2020-08-11 1.03.50

ただし、機器によってはイヤホンの着脱に伴い、音声のタイミングがずれる(もしくは一度停止してしまう)状態が発生しているようで、実際は前奏以外のところも使って調整しました。

2. ノイズ除去
あらゆる環境での録音が届きました。エアコンの音が入った物、タッチノイズが入った物、屋外で録音された物。基本的にはGateをかませて小さなノイズを取っていきますがどうしても取れないノイズも発声してきます。エアコンなどの定常的なものについてはEQで対応しますが、突発的でクリティカルなポップノイズやタッチノイズのようなものはガサッと切り落としてしまうこともありました。

スクリーンショット 2020-08-11 1.14.17

3. タイミング調整
タイミングが大きくずれている人は個別Audio Warpを使って位置を修正しました。今回はガイドボーカルがなかったので、独断と偏見でガイドボーカル的に演奏が上手なトラックを選びそこからのズレを見ました。

スクリーンショット 2020-08-11 1.19.14

4. パンニング、全体EQ
パンニングと全体EQを行いました。
パンニングは、周波数帯がどちらかに偏るとこもった音になってしまうので、周波数バランスを意識して左右に微妙にずらしながら配置しました。

スクリーンショット 2020-08-11 1.39.31

全体EQは、どうしても歌のトラックばかりだと中央の周波数帯が上がってしまって篭り気味になるので、4000Hz付近を持ち上げて低域を落とすようなEQをかけました。

大合唱ミキシングのコツ

上述の通り、基本的には一般的なミキシング/マスタリングの処理と変わりません。他の楽器が無い分平易な方です。
ただし「どのくらいのノイズを落とすのか?」「どのくらいタイミング調整を行うか」「どれくらいEQをかけるのか」このあたりの判断はトラック数が多い故に大変でした。
最初の方は、1トラックずつ調整しながら足していっていたのですが、30トラック辺りまで編集していて以下の疑問が湧きました。

・大合唱でピッタリあっている演奏は不自然ではないか
・全部のトラックが揃った時に今の調整がどれくらい影響を与えているかわからない
・(このままじゃ間に合わない)

そのため、1トラック(もしくは少ないトラック)ずつ確認するのをやめて「全158トラックを流した時に大合唱感の妨げになるか」で判断しました。
リップノイズなんかは大合唱感を損なう室内感(そんなに近くで口元の音は聞こえない)を与えるので、厳しく除去していきました。

こうすることで実際の最終的な出音に対して悪影響を与えているものだけを迅速に処理できますし、大合唱故のばらつきを自然に残して表現することができます。

ズレ故の深みとリバーブ感

トラック数がある数(体感では60くらい?)を超えると、ピッチのズレが深みに、タイミングのズレが程よいリバーブ感として機能しだしました。この辺りはオフラインの合唱でも似たような現象があるなと思っています。

まとめ

オンライン大人数合唱を自然に表現するには、1トラックずつ綺麗に調整するのではなく、全体のトラックの中で違和感があるものを潰していくアプローチが効果的でした。
程よいズレを残しておくことで、自然な音源を作れることがわかりました。



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