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シェイクスピアの記憶 その25

◾️真夏の夜の夢(2020)@東京芸術劇場プレイハウス 演出:シルヴィウ・プレカレーテ

 野田版真夏の夜の夢を、ルーマニア出身のシルヴィウ・プルカレーテ演出で。プルカレーテ演出は、佐々木蔵之介主演のリチャード三世を映像で見て、すごく好みの演出だと思っていた。まさか、野田版をやるのだと思わず、この公演に行こうと決めたので、後で知ってびっくり。え、野田秀樹とテイスト違いますけど…

 そして、見てみたら、野田演出と全然違うアプローチで、こんな風にもできるのか、と驚いた。
 登場人物は白塗りで、全体に色の抑えられた舞台。パネルを使った転換やゴミのようなビニールの山から現れる妖精たち、プロジェクションマッピングで映し出される巨大なメフィストの顔。悪趣味ギリギリなラインがプルカレーテらしい。でも、全体に練り切れていないような雰囲気もある。コロナのせいで、なかなか来日できず、ずっとリモートで演出していたというから、もしもっとみっちり稽古が行われていれば、さらに良い舞台になっていたのかもしれない。そう思うと残念ではある。

 また、初期の野田作品らしく随所に散りばめられた言葉遊びは、その魅力を活かしきれておらず、ここはやはり、海外出身の演出家では難しかったのだろうと思う。
 主役のそぼろを演じた鈴木杏もよかったのだけど、今回は何よりメフィストの今井朋彦が魅力的だ。飄々として得体が知れない。奇妙な明るさと底知れない不気味さ。悪夢とも思えるような夏の森を暗躍して、目を惹く。

 さて、今まで観て来たシェイクスピア作品、何とか書き切った。
 並べて見ると、マクベス率の高さよ。
 そして、蜷川幸雄のシェイクスピア、ほとんど観てないことに気づいた。いつも観劇候補に上がっていたのに、何故か行かなかった。シェイクスピアではない蜷川作品はちょいちょい観ていたのに。惜しいことをした。
 好きだと思った演出は、大抵ダークなものだったのに気がついて、あぁ、私の趣味って…と思ったりもした。あと、一言でもいいから、感想残しておくの、大事。せっかく出会ったお芝居は、思い出せるように、記録しておこう。

 シェイクスピアの記憶は、一旦終わりだけど、ちょこちょことシェイクスピア以外のお芝居のこと、美術館のこと、好きな本のことなど、書いていきます。

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