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シェイクスピアの記憶 その13

◾️マクベス(2010)@世田谷パブリックシアター 演出:野村萬斎

 萬斎マクベスの初演。マクベス夫人は秋山奈津子。魔女に高田恵篤、福士惠二、小林桂太。出演者は5人だけ。
 マクベスとマクベス夫人以外の人物を3人の俳優が入れ替わりで演じる。そのため、夫妻以外のキャラクター性が排除されて、物語はマクベス夫妻にギュッとフォーカスされる。
 同時に、マクベス夫妻をとりまく全ては、魔女が姿を変えて動かしているようにもみえるので、魔女に追い詰められていくマクベス夫妻という構図がはっきりとする。

 全体に、野村萬斎らしい美学に満ちた舞台で、和の要素もふんだんに盛り込まれ、美しいし面白い。その後、再演も重ねて、海外公演でも評価されたと聞く。うん、海外ウケする理由はすごくよくわかる。侘び寂びや禅に通じるような美術、和楽器を取り入れた音楽、桜や着物、鎧などわかりやすく日本が感じられる要素が散りばめられている。かつ、萬斎さん自身が、狂言役者であり、どっぷりと日本の伝統芸能に浸かって、芸を体現できる人だから、「日本らしさ」が上滑りしない。

 でも、「マクベス」ではなくて、「野村萬斎」を見せられた気になってしまうのは、なぜなんだろう。萬斎さんの才能は素晴らしいと思うのだけど、どこまでいっても良くも悪くも萬斎さんなんだよなぁ。

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