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シェイクスピアの記憶 その18

◾️ヴェニスの商人(2018)@原宿VACANT 演出:木村龍之介

 ほぼ日の学校のシェイクスピア講座の村口和孝氏の講義にインスパイアされてできたであろう舞台。講義に参加した者としては、どんな作品になるか、とても興味があった。

 まず、原宿VACANTという、劇場ではないスタジオ空間のスリリングさ。同じ高さ、すぐ目の前を役者が動き回る。それだけでワクワクする。

 ヴェニスの商人は、極悪な高利貸しのシャイロックを義に厚いアントーニオが懲らしめる勧善懲悪の話としても捉えられてきた。その反発として、シャイロックを主役に据えて、ユダヤ人への差別を描く演出もある。今回の演出は、そのどちらでもなかった。
 アントーニオは、話の冒頭から憂鬱に囚われていて、それは解消されない。
 裁判に勝って、シャイロックをやり込めて、難破したはずの船も戻ってきた。めでたしめでたしの結末の中で、ひとり取り残されるアントーニオと彼の憂鬱を煽るよう踊るシャイロックの姿が胸に残る。

 ちなみに、客入れ時に流れていたのが、デビット・ボウイ(Fameだったか、YoungAmericansだったか)でテンションが上がった。

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