免許合宿6日目「しらちら教官」

免許合宿6日目
日記作成者 下島
半谷との関係 普通
帰りたい度 85
朝食 無し
昼食 坦々麺
夕食 エビフライ 大学芋 ほぐし鷄の和え物


今朝の僕はどうしようもなかった。朝食の焼き魚にあまり惹かれていなかったからだと思う。一旦起きて一応半谷を朝食に誘ったが当然断られ、それに対して張り合うでもなく二度寝してしまった。結果1限の授業ギリギリの時間に目が覚め、黙って技能教習に向かった。何故か悔しさは残ったが、予定では今日の教習は1限だけ。これが終わればあとは自由である。



1限の技能教習、髪をしっとりさせた若い陰キャラが担当についた。半谷の日記を読んでわかったのだが、こないだは僕がメモを取らないばっかりに詰めてきていたようだ。もっと大きい声でハキハキ喋ってくれ。
しかし技能教習では隣に座っているということもあり、さすがに声は聞こえた。坂道発進の授業であったが、そんなに問題もなく出来た。髪しと教官も優しかった。

一限が終わりあとはだらけるだけと半谷と部屋でダラダラとすごしていると、昼前に知らない番号から半谷へと電話がかかってくる。非常に怪しい電話であったが僕が制止する間もなく出る半谷。それはこの教習所の事務からの電話で、内容は君たち2人とも今日暇なんだし1時間ずつ技能追加ですとの事。小太りめ。お前が電話に出なければ避けれただろう。今日はひたすらにだらける予定だったのに、本当に余計なことを。

昼食を取り終え、13時から先に半谷が技能教習を受け、僕は14時からであった。担当は白髪を散らかしたじいさん。「53番の車」とはっきり言われたので53番に向かうと、そっちへ行ってどうすると言いながら50番の車に乗り込んでいった。大丈夫かこのじいさん。黙って車に乗り説明を受け始めるのだがこの白髪散らかしじいさん、訛りが強くて本当に何を言ってるのかききとれない。でもなんかどうやら、お前は問題ありとの報告を受けている、みたいなことを言われてる気がする…そんなわけないか。仕方なく適当に返事していると、今度はどうやら「はっ倒すぞ」としきりに言われ始めた。なんでわけもわからずはっ倒されなきゃいけないんだ。だんだん耳が慣れてきて、しらがちらかしじいの言ってることもわかるようになってきたがこのしらちら、かなり厳しい。僕がエンジンをかける順序をひとつでも間違えると「はっ倒すぞ」。ハンドルを切る量をミスると「はっ倒すぞ」。ブレーキを踏む量が少ないと「はっ倒すぞ」。もういいから早くはっ倒してくれ。それにしても狭路の通行はムズい。道が狭いため、絶妙なタイミングでハンドルを切らないと曲がりきれないのである。けれども運転しているうちにだんだんと掴めてきた。授業も終盤に差し掛かりラスト。左に曲がるのは完璧、あとは右に曲がれれば…ここだ!と、自分の思う完璧なタイミングでハンドルを切った。しかししらちらは容赦なく「はっ倒すぞ」と。タイミングが遅いとのこと。後退し、やり直すことに。するとしらちらがハンドルを貸せ、と。悔しいが仕方なくしらちらにハンドルを預けた。いいか、前輪と縁石が横に並んだら思いっきりハンドルを切るんだぞ…ここだ!と言いしらちらはハンドルを切った。くそ、そこだったのか。縁石に乗り上げるのが怖くて早めにハンドルを切れなかった自分を猛省した。
『ゴンッ』
鈍い音とともに、後輪が縁石にのりあげた。あれ?少し早かったか、おかしいな、としらちら。じじい、はっ倒すぞ。

部屋に戻ると、先に戻っていた半谷が鍵を閉めていた。中から鍵を開けてもらうと、奴はガムをクッチャクッチャと音をたてて噛みながら僕を出迎えた。なんだか腹が立ち、僕は目の前の小太りをはっ倒した。

実は明日はチビ小太りの誕生日である。僕はまだ20歳だが、奴は22歳になるそうだ。さて、何をしてやろうか。

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