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京都市長選挙2024

 2024年2月4日に投開票が行われた京都市長選挙で、新人で自民・立憲民主・公明・国民民主が推薦した元参議院議員の松井 孝治さんが当選しました。今後の京都・日本政治の帰趨を占う意味でも全国的に注目を集めた今回の市長選は、4期市長を務めた門川 大作市長が不出馬を表明し16年ぶりとなる新人同士の対決となり、今回は共産支援の福山 和人さんに元府議の二之湯 真士さん、元市議の村山 祥栄さん、諸派の高家 悠さんの5人が出馬するというやや候補者乱立のような状況となりました。


各候補出馬の経緯・選挙戦など

 まず、自民党京都府連の内部分裂によって(といっても少数)先に二之湯さんが完全無所属で出馬表明し、引退間近の市議が応援に付き、これまた引退間近っぽい府議の一部が支援する形となりました。かつて京都政界のドンだった野中広務さんの秘書をしていたという人達が集まり、二之湯VS西田という対立が生まれ、保守分裂と言われるようになりました。私は自民党支持者ではないので知るかいなって話ですが。

 しかし、長年続く非共産対共産の構図が問題だと言っていた割には選挙戦では北陸新幹線延伸ルート(小浜・京都ルート)を主要な争点にし、西田 昌司参議院議員(自民京都府連会長)に対する批判ばかりが目立った印象で、正直、何故出馬をされたのか疑問が残りました。新幹線の延伸ルートの話をされても、よくわからないという市民の方が私を含め多数で、LRTや宿泊税の値上げ、行財政改革はまだ理解できるのですが、小池知事が最初に出馬した時のようなポピュリズム的な手法を間違えたのかはわかりませんが、京都市だけで決められそうもない事を第一の争点にしたのは大きな失敗だったと言わざるを得ません。逆にLRT、宿泊税、行財政改革などを第一の争点にすればもっと票を取れたかもしれませんね。
 
 福山さんは今回、共産推薦ではなく共産が支援するという無所属市民派という形をとり前回に続いて出馬。無党派層では一番多く票を取り、自民、立憲、維新の支持層の一部からも票を取りました。ただ政策面では、弱者を救うという姿勢は分かりますが、財源が不透明な部分もあり、国のようにお金を刷る事が出来ない自治体では実現が極めて困難なものばかり。極端に左派色の強い政策も一部ではあったり時代錯誤な革新系の要素も感じてしまいましたね。

 地元の伊吹文明元衆議院議員の呼びかけで発足した「文化首都京都の市長候補を京都市民で考える会」が提言を発表し要請を受ける形で、元民主党参議院議員の松井孝治さんが立候補を表明。自民・立憲・公明が推薦し、無所属の北神衆議院議員も加わり、西脇 京都府知事も松井さんの支持を表明しました。

 一方、第三極は元市議の村山さんが出馬。表明は一番最後で、今回で三度目。元KBS京都のアナウンサーが出馬するなんて噂もあったらしいですが本当かどうかは分かりません。(出るなら自民立憲公明国民推薦じゃないと無理でしょうけど)村山さんは地域政党京都党に維新、国民民主府連、前原新党が推薦を出し、一時は松井さんと村山さんが横一線また僅差で村山リードという情報もあったそうですが、村山さんに架空パーティー疑惑が浮上。1度や2度のミスならともかく9回中8回も来場者がいない架空パーティーなんてどう考えてもおかしいですね。身を切る改革を謳いながら、このような金銭面の不祥事を起こすとはとても呆れました。維新系は数の割には本当に不祥事が多いから全く信用できません。
 さらに、すべて推薦取り消しになるという異例の事態となり、出馬を取りやめるべきだという声も上がったそんな報道も一部でありました。
 途中で国民民主党が分裂するような形で本部が松井さんに推薦を出し、選挙戦では国民民主の市議も松井さんの応援にかけつけたのだとか。これも共産党市長は絶対阻止するぞということなのでしょう。
 結果的には非共産対共産の構図を変えられなかった事に村山、特に前述の争点を考えると二之湯両候補者のズレを感じざるを得ません。改革はあくまで手段の一つでしかなく、改革そのものを自己目的化していないか? 京都市民はかなり厳しい目審判を下しましたね。私も非共産対共産に疑問に思うところはありますが、それが京都市衰退の根本原因かと問われると微妙なところで国が政策を誤れば京都に限らずどこも厳しいだろうというのが正直なところ。

 選挙戦では序盤から激戦……。の割には市民は冷静でしたが、特にSNS上において激しい誹謗中傷合戦やデマが流れたりしたそうで、残念ながら、ほとんど真っ当な政策論争がされなかったと言わざるを得ません。
 自民党の派閥資金問題に怒りを覚えるのはもちろん分かりますが、争点は京都という都市をどう運営していくかであり、国政の問題は国政で別に取り組めばいいのであって、憎悪ばかりを煽って市民から冷静な判断を奪うようなことはすべきではありません。特に福山、二之湯両支持者からそういった印象を受けましたね。 

2024年 京都市長選挙 開票結果


松井 孝治177,454票(37.9%)当選
福山 和人161,203票(34.4%)
村山 祥栄  72,613票(15.5%)
二之湯  真士54,430票(11.6%)
高家 悠        2,316票(0.5%)

京都市長選挙の開票結了速報 (kyoto.lg.jp)

 情勢調査では松井さんと福山さんが、横一線や京都新聞を中心に激しく競り合うと出ていましたが、結果的には思っていた以上に大差が付いたかなという印象です。過去のデータを見てみますと、2008年市長選では門川さんが951票差という激戦で1996年市長選では桝本さんが4,092票差、1989年市長選は田邊さんがなんと321票差で制するという新人同士の争いでは常に激しい戦いを繰り広げてきたのです。だからこそ、自民から立憲、国民民主まで相乗りをせざるを得ない。状況によっては社民まで相乗りしていた事もありました。正直、1,000票~5,000票差ぐらいの激戦になるかと思ってましたが、次点に16,251票差をつけ松井さんが当選しました。(初当選は〇〇1票差になるジンクスでもあるのかな? 知らんけど)

 私もネット中心で開票を見守っていて、NHKの当日出口調査では福山さんの名前が先に出て激しく競り合うという情報に困惑しましたが、期日前投票では松井さんがリードという事でなんとか勝てるかと思ってました。恐らくこの時の票が16,251票差に繋がったのかと思います。開票率88%で松井さんに当確(KBS京都は少し遅れて当確)。私と主人、両親ともに松井孝治さんに投票したので良かったという気持ち半分、ほっとしたというのが正直なところです。門川市政、そして松井候補の政策・主張を全て評価・支持している訳ではありませんが、総合的に政策を見比べて松井さんに投票したまでです。また門川市長は4期目に景観条例政策を見直しましたが、これは元々桝本市長の時代にできたものです。できればもう少し早く見直してほしかったというのが正直なところ。その他にも微妙なところはありましたが、だからといって共産党系の市長はご勘弁をという気持ちがこういった投票になったわけです。
 保守分裂と言われた割には二之湯さんは苦戦。村山さんは不祥事で自滅共に惨敗となりました。※ただ村山さんを保守系と呼ぶのは個人的に大きな違和感がありますが。

 共産支援の福山さんは情勢・出口調査を見ると思っていたより伸び並み。ただ上京や北区で松井さんに僅差で競り勝ち左京区では前回に続いて勝利。まさか上京で共産系候補が勝つとは……。やはり福山さん・共産党は侮れないところがありますね。東山区は一部の情勢調査では福山さんがリードしていたという情報もあったそうですが、ここは挽回して松井さんが制した形に。ただ全体で見てみると34.44%の得票率だった福山さんは前回34.6%とほぼ横ばい。結果的には共産の組織力の低下を感じる形に。私の地元・下京区は府議・市議共に共産党は地方選で落選したのでその影響も少なからずあるかも? 洛外の行政区で松井さんが大きく引き離したという事に加え、出口調査で投票した候補者とは違う回答をしたけったいな市民もいたのかもしれません。当選した松井さんに自民支持層は6割半ばが投票し二番目は福山さん以下、村山、二之湯といった順に票が流れたそうで、共産支援候補が二番手というのは京都ならでは。立憲は4割後半、公明9割国民民主は3割後半無党派層は3割近くが投票しました。一方無党派層の3割半ば一番多く票をとったのは福山さんで村山さんは2割ほど。二之湯さんは1割台で広がりは見られませんでした。

 よく、他所さんからは京都=共産が強いと言われがちです。府議選や市会選で共産党の候補がトップ当選しても誰も驚かないような地域です。しかし、それは京都市でも一部。行政区によっては中京や下京、南、右京、西京などの各区はどちらかというと保守地盤に近い。ただ他府県と比べると共産は一定の力はまだまだあるんだなと思いました。
投票率の方は41.67%(前回比0.96)と上がりました。

今後の松井市政の行方は?


 松井 孝治 新市長には発信力のある市長になってもらいたいということ。どうも京都市は発信力が弱く、それゆえに誤解されたり、悪意のある印象操作をされる傾向にあります。財政は確かに厳しいですが、改善はされており単年度赤字を22年ぶりに解消することができています。しかし、未だに財政破綻するなどといったデマ・レッテルに近いような放言を見かけます。そもそも全国の自治体は一部を除きどこも厳しいものだと思いますけどね。昔に比べると地方交付税が減らされているのでこれを政令市のある自治体は増やすとかしてもらいたいですが、これは他の道府県・政令市と力を合わせていく必要がありそうですね。

 オーバーツーリズム所謂観光公害に関しては、宿泊税を例えば30,000円以上なら最大10%は取るといった大幅な引上げもありかなと思います。市営地下鉄・バスの市民優先価格は中央と太いパイプがある松井さんらしい政策ですが、実現するには時間がかかりそうですね。市民に負担をこれ以上させない政策を実行してもらいたいと思います。

 また都市開発についてですが、都心部は京都駅周辺ぐらいしか再開発はできませんが、洛中・東山などの景観は守りつつも、洛外は一定の開発を認める。高層ビル、タワーマンションは山科や右京、南、伏見の一部では許容して杜撰と言わざるを得なかった都市計画からメリハリのある都市計画をお願いしたいところです。また松井新市長は選挙戦で京都を日本のシリコンバレーにすると主張していました。
 以前の記事でも書きましたが、京都市は観光都市ではありません。現代都市としては内陸型工業都市であり、主要産業は製造業ですから、市民・府民や学生さんの就職先、雇用を増やす為にも企業誘致やベンチャー・スタートアップ支援などより力を入れてほしいところ。あと、音楽文化都市・京都というのは独自カラーを感じますね。国際的な音楽イベントだけでなく、国内外の大物ミュージシャンも公演できるようなもっと大きな会場が京都市もしくはその近くにあってもいいのかなと。京都は伝統と革新の都市でもあります。都市は新しいエネルギーとその広がりがあってこそです。

 門川市長から引き継いだ京都が都として再びその機能を果たす双京構想(東西両京制)も注視。文化首都・京都を名乗っているわけですが、文化庁が京都に移転してきただけで文化首都になったとは思いませんし、やはりこの構想が実現しないと本当の意味で文化首都という感じはしません。
他にも京都市の課題は山積みですが、極端な緊縮政策に走ることなくバランスを取りながら一歩ずつ着実に改善、解決していってほしいですね。

 松井 新市長は中京区出身で実家が町なかの旅館(私の家から結構近い)。詳細な場所は書きません。地元住民なら大抵知ってますので。また、西脇知事は同じ下京区出身となんや世間は随分と狭いもんやなと思ったり……。


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