【朗読】山本周五郎アワー『おたふく 2024ver』 作業睡眠用 ナレーター七味春五郎 発行元丸竹書房

1949年(昭和24年)4月 『講談雑誌』に、発表作品。

※おたふくのモデル
 おたふく物語——としてなんども映像化演劇化された本作ですが、そのモデルは周五郎の二番目のおくさん、「きん」さんです。このきんさんは、五人兄弟。妹に八重子という人がいて、すぐ上の兄、三男が共産主義活動にはまって、父親がいくども憲兵に呼ばれたり、家族が肩身の狭い思いをしていたのも、そのまんまです。父親の吉村八十八が金助町で飾り職をしていたのも同じ。主義者の妹だ、と後ろ指をさされて、縁談もなくなった、というのもお話のままで、次兄は両親の面倒もみない(長男は三十二才で病死)結果、妹ときんさんとで、親を養うことになる。行き遅れのまま、三十八という年になる。
 先の事情で金助町に居づらくなった一家は引っ越しをするわけですが、その筋向かいに周五郎一家がすんでいたわけで。

 このきんさんは、周五郎の小説にはさほど関心がなかったらしく、あるとき髪結いにいって、だれが作者なのかも知らずに読んだ小説がわりと面白かった。うちに帰って、そのことを主人に話すと、周五郎は「」かあさん、そりゃ、ぼくの書いた小説だよ」とうれしそうに言う。
 このように、小説と現実のきんさん一家はすべてが同じでないにしろ、かなりのエッセンスがまじっているのはまちがいない。

 周五郎先生、あるとき奥さんのきんべえに、こんなことを言った。
「ぼくがさきに死んだら、一字一字大切に読んでくれ。だいたいの小説に、かあさんのことがでてくるから」

 山本周五郎が、きんべえへのあふれる愛をこめた小説「おたふく」
 お聴きください。

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