見出し画像

【エスパルス】2022年J1第5節 vs神戸(H)【Review】

タレントを数多く擁しながら、今季ここまで3分3敗の17位と波に乗れていない神戸をホームに迎えた1戦。

ここ2戦、複数失点が続いていたことを踏まえ、平岡監督はこの試合に向けてどのような対策を打ってきたのか。そこに絞って簡単に振り返ります。

1.スタメン

画像1

エスパルスは、前節・C大阪戦から井林→ヴァウド、山原→後藤、髙橋→中山の3カ所を入れ替え。サイドハーフのポジションは、開幕から毎試合組み合わせが変わっており、メンバー選びに苦慮している様子が伺えます。

一方の神戸は、週の半ばにACLプレーオフを戦っており中3日での試合。前節から5名が入れ替わっており、エスパルスとしては連携面の隙を突いていきたいところ。

2.スタッツ

GKをビルドアップに参加させたり、中盤を菱形にして選手間の距離を縮めたりして、地上戦で敵陣の攻略を試みる神戸。
一方、「ハードワーク」「犠牲心」を重んじ、前線からボールを追いかけ、スライドを繰り返しながら、良い守備を良い攻撃に繋げたいエスパルス。

こうした両者の特徴が、スタッツには色濃く反映されています。

ただ、スタッツだけ見る限りは、エスパルスが辛うじて勝ち点1を拾った試合とも言えそうです。

3.前節からの変化

試合後、「課題としていた守備を、1週間で整理した」と語った平岡監督。具体的にどのような修正を施したのか見てみます。

【プレッシングの修正】

GK+2CB+アンカーで菱形を作り、自陣で数的優位を確保する神戸。
これに対してエスパルスは、2トップの片方がアンカーのケアを徹底しつつ、もう片方がワンサイドカット(逆サイドにボールを展開させないプレスの追い方)でのプレッシングを敢行(下図)。

画像4

エスパルスは、高い位置からプレスをかけようとSH(後藤・中山)が前がかりになると、CH(竹内・白崎)のところで数的不利になってしまいますが、上述のような追い方で相手CBのパスコースを限定しつつ、CH同士の横の距離感をコンパクトに保つことで、パスミスの誘発や中盤でのパスカットを狙います。

また、相手のアンカー(扇原)をケアすることで、神戸のビルドアップはSBを経由することが多くなりますが、エスパルスはSHのプレスと連動してSBが縦にスライドし、SBに自由を与えません(下図)。

画像5

神戸に前線で幅を取る選手がおらず、エスパルスのSBが思い切って前に出ることができた今節特有の事情はあったにせよ、プレッシング時の味方同士の距離感や連動性には、一定の改善が見られました。

これが実を結んだのが、前半22分の決定機(下図)。
原から斜めのパスを受けた鈴木唯人が持ち込んでシュートを打った場面ですが、大崎からの苦し紛れの縦パスを誘発したのがSHによるプレッシングであり、SBの前に出る意識です。

画像6

ボールの状態によって攻撃と守備とが一瞬で入れ替わるのがサッカーというゲームの特性であり、「良い守備が良い攻撃につながる」という言葉の意味が端的に表れたのが、上述のシーンだったと思います。

【手つかずのビルドアップ】

こうした守備面のテコ入れが見られた一方で、今節もビルドアップはスムーズさを欠きました。

ここ3戦、エスパルスの対戦相手は、こちらが自陣でのボールの前進に苦労していることをスカウティングし、敵陣で人を捕まえるプレッシングを志向してきています。

そこで、今節のエスパルスは、最終ラインで無理にボールを繋ぐことなく、サイドの選手を目がけてシンプルに長いボールを入れる場面が目立ちました(下図)。

画像6

この背景には、以下のような事情もあるようです。

【平岡監督の試合後コメント】
今回に限っては、攻撃の方にはほとんどフォーカスしていなくて、(中略)ハーフタイムでは奪ったボールをもう少し相手陣内でつないだりすることを伝えたが、あまり攻撃のところは手をつけていなかった

こうした中でも、相手のプレスのかけ方を逆手に取り、うまくボールを運べた場面もありました。

前半31分、ボールは片山を経由して中央の白崎へ。白崎をアンカーの扇原が捕まえようとしますが、シンプルに右サイドに展開すると、アンカーが動いたことで生じたスペースを使って鈴木唯人がボールを受け、ドリブルで敵陣に侵入することに成功しました(下図)。

画像6

このシーンを図示するとわかるように、選手同士が近づきすぎずに適度な距離を保つことで相手を動かし、スペースを創出することができています

ボールを保持している場面において、味方同士の距離が近いということは、相手も近くにいるということ
ボールの受け手となる前線の選手の動きにも改善点はありそうですが、ときに「ボールを受けに来る」動きが相手のプレスをも呼び込んでしまうこともある、という点には留意すべきでしょう。

いずれにしても、平岡監督が繰り返す「フレキシブル」には、「相手の動きを見ながら柔軟に対応しなさい」という意味が含まれているのだろうと思うので、ビルドアップの成熟にはまだまだ時間がかかりそうです。

4.所感

今回は「守備の修正」に着目してみました。
ベースにあるのは「ハードワーク」なのでしょうが、仕組みの部分にも一部着手していることが読み取れました。

ただ、対戦相手が変われば、やるべきことも変わります。今回施した修正が、次回も同じように通用するかはわかりませんし、相手もこちらのやり方を研究してくるので、一筋縄にはいきません。
一方で、今節のように課題を1つ1つ修正しながら、積み上げていくしかないのも事実です。今は選手が目一杯ハードワークをして、ゴール前で体を投げ出し、なんとか失点を防いでいますが、こうした修正の積み重ねが、効率的で隙のない守備につながることを祈ります。

個人的には、「前線からアグレッシブに追っていきたい」という想いはわかるのですが、なんのためにそうするのか、また上手くいかなかったときにどうするのか、まだ整理されていないように思えます。
とくに、どのエリアでも同じような守り方(人に食いつく)をしているのが気になります。目の前の相手に向かう、ボールを奪おうとする、そうした気概だけではなく、埋めるべきスペースや味方との位置関係にも、もう少し意識を振り向けてほしいと感じます。

とにもかくにも、これからも監督がやろうしていること、できたこと・できなかったことを観察し、自分の言葉で整理する作業を続けていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?