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【エスパルス】直近10年の選手変遷と2021シーズンの陣容(感想)

1/15の新体制記者会見を以て今季の陣容も固まり、いよいよ清水エスパルスの2021シーズンが始まりました!

今季のエスパルスは、コロナ禍で厳しいクラブ運営を強いられる中、スポンサーのご支援も得ながら、思いも寄らぬ積極的な補強に打って出ました。
ロティーナ新監督やコーチ陣に加え、11人もの新加入選手を迎え、ピッチ内外で大きな変革が予想されます。
この動きをサポーターも概ね好意的に受け止め、SNS等では早くもロティーナ監督の志向するサッカーや新加入選手の起用方法について、さまざまな考察がなされています。
毎年この時期は、期待で胸が高鳴りますね。

一方で、大規模な選手の入れ替え…といえば、10年前にも似たようなことがあったのが思い出されます。そう、長谷川監督からアフシン ゴトビ監督に変わった、あのシーズンです。
当時はネガティブな印象が強かったですが、10年周期で同じようなことが起こるのにも、なにか因縁のようなものを感じます。

思えば、ここ10年でエスパルスは随分変わりました。2度の社長交代、J2降格からの1年で復帰、サッカースタイル変革への挑戦… 成績が安定しなかったこともあり、他チームと比べて選手の出入りも多かった気もします。

そこで、先日 清水分析同好会 第2回 清水エスパルス 歴代選手ドラフト会議をやった際に整理した年表を使って、ここ10年の選手変遷を追ってみます。
(それっぽく書いていますが、とくに考察はありません)

1.チーム人件費の推移

選手の動きの前に、これまでクラブが選手(人件費)にどれだけお金をかけてきたのかを見ていきます。

まず、下図は直近10年における「営業収益(=売上高)に占めるチーム人件費の割合」を示したものです。

【チーム人件費に含まれる費用】(spulse39調べ)
・選手、監督、チームスタッフ等の年俸
・移籍加入する選手に支払う移籍金、契約金など

営業収益対比

営業収益チーム人件費率は年度毎にブレがあり、概ね35~50%の間で推移。この中では、相対的に2015年度(48.6%、シーズン中に鄭大世や角田誠を補強)、2018年度(45.5%、ファンソッコ・ドウグラスを獲得)の高さが目立ちます。

クラブ経営の観点で見ると、この指標は50%以下に留めるのが望ましいとされているようです。経営破綻を経験しているエスパルスとしては、予算の制約もある中で、現実的な範囲で選手にお金をかけているのがわかります。

なお、近年は他クラブがビッグネームに投資することも増えており、全体的にチーム人件費率は上昇傾向にあります。直近2019年度のJ1平均は51.6%となっており、エスパルス(40.3%)はJ1の中で下から2番目です。
こうした中、エスパルスも翌2020年度にカルリーニョス、ヴァウド、ネト・ヴォルピ等の外国籍選手を補強するなど、トレンドに追随する動きを見せています。今季(2021年度)の積極補強も、コロナ禍の厳しい経営環境ではあるものの、近年の流れから考えると納得できます。

続いて、下図は直近10年の「チーム人件費の推移」を示したグラフです。

人件費

チーム人件費の絶対額は逓増しており、とくに左伴社長の就任(2015年度~)後、2017年度にトップライン(営業収益)が増えた局面で、チーム人件費も増加しているのがわかります。

クラモフスキー監督を迎えた2020年度(計画=グラフの赤い部分)は、これまでにない予算の投下が想定されていた様子ですので、決算がどうなったのか、そして親会社から多額の浄財を得た今季(2021年度)がどんな水準になるのか、楽しみ半分・不安半分といったところ。

さて、上図だけ見ると、「エスパルスは人件費にお金をかけられるクラブになってきた!すごい!!」となりますが、ここで少し見方を変えてみます。

人件費(比較)

上図は、エスパルスのチーム人件費をJ1平均と比較したもの。
2016年度まではJ1平均に肉薄していましたが、2017年度を境に差が開いているのがわかります。

これは、イニエスタ・フェルナンド・トーレス等のビッグネームが引き上げている側面もありますし、神戸や鳥栖の現在の状況を見るとトレンドとして捉えて良いのか疑問も残ります。
ただ、スポーツの価値が見直され、日本のサッカー界に対する投資が増えているのは確かですし、一般的には人件費とチームの順位に相関があると言われている中で、本当にタイトルやACL出場を目指すのであれば、もう一踏ん張りが必要です。

一方で、J1平均との差が開いているとはいうものの、見方を変えれば(以前のエントリでも触れましたが)左伴社長が必死に営業に注力したおかげで、リーグ全体の流れに遅行することなく、なんとか食らいついていけたとも言えます。
今季はチーム人件費の増加トレンドは一服すると思われますが、こうした状況下で選手にしっかり投資できたエスパルスは、他クラブより一歩前に出る大きなチャンスを掴んだともいえます。なんとか結果を残してほしいものです。

エスパルスは、首都圏のお金があるクラブとは立ち位置(収益構造や経済的な基盤)が違うので、持続的な成長軌道を描くためにも、今後は育成をベースにしたメリハリのある投資が必要だと思います。
山室社長は、今後のエスパルスにどのような絵を描いているのでしょうか。個人的には強化の方向性が気になるので、引き続き注視していきます。

(蛇足おわり)

ここからは、本題の「選手の動き」を見ていきます。
(※以下、結果論でしか語れない点はご容赦ください。選手個人を貶める意図は一切ありません)

2.GK

※表の中の数字は、背番号を示します

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近年、失点の多さが目立つエスパルス。その要因の1つとして、単純にGKやDFの質や選手層に言及されることが多いですが、実際の選手の出入りはどうなのでしょうか。

直近10年で最も在籍年数が長いのは、西部洋平、高木和 徹(6年)の2人。これに櫛引政敏、碓井健平(5年)が続きます。
こうして見ると、将来の主軸となりそうな選手の引き留めに失敗し、穴埋めに即戦力を補強する傾向にあるのがわかるほか、櫛引を自前で育てられなかった反省もあったのか、レンタル移籍を活用したGKの育成にチャレンジしていることも読み取れます。

総じて、上位を目指す陣容としては心許ないと言えますし、守備の要となるポジションの人材を固定できなかった点に、失点が嵩んだ要因の一端があったと言われても仕方ない気がします。

今季は3人体制となりますが、日本代表(A代表)経験者としては林・六反以来となる権田を獲得。選手層は近年随一と評価しても良さそうです。

3.DF

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(今更ですが、図が小さくてすみません)
DFについては、大きな節目が3つあるのが見て取れます。

1つ目が、ゴトビ監督下の2012~13年あたり。長谷川監督時代の在籍選手がほぼいなくなり、平岡・ヨンアピンのCBコンビが定着しました。

2つ目は、J2に降格した2016~17年前後。三浦弦太・犬飼智也・松原后などの若手の台頭があった一方で、この時期に補強した選手の多くは短期間でエスパルスを去っています。

3つ目は、「RE-FRAME」を掲げた2020年シーズン。複数のポジションをこなせる(いわゆる「ポリバレント」な選手)を集める、との方針がよく見える構成になっています。

この間、三浦・犬飼など生え抜きで優秀なディフェンダーが育ったものの、育てては他クラブに抜かれ、という現象も見られました。
移籍金を獲得しながらも、後から見ればGKと同様に軸となる選手を失った感もあります。とはいえ、リーグ全体として優良な人材が不足しているポジションでもあり、編成の舵取りが非常に難しいところだと思われます。

今季以降、在籍年数の長い立田を中心に、長期的にも計算できるような基盤を作っていってほしいところです。

4.MF

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MFは、GK・DFとは対照的に、現在もチームに残っている選手の在籍年数が長いのが特徴です。

頼れるキャプテン・竹内は2009年加入(今季で在籍12年目)ですし、新時代のバンディエラ・河井も2011年から一貫して在籍(同11年目)。石毛・金子も、J2降格前に加入しています。

また、下部組織出身の杉山浩太・枝村匠馬も2017年まで長期にわたって在籍してクラブを支え、高卒で獲得した白崎もレンタル移籍を挟んで大きく成長し、チームの柱となりました。

一方で、このポジションは外国籍選手の割合が低いことも目立ちます。その結果、良くも悪くも日本人らしい「小柄でボール扱いに長けた選手」に編成が偏っている傾向も見られます。

そういう意味では、スピードに優れ突破力のある中山克広や、守備的なポジションならどこでもこなせる原輝綺の加入は、選手層に厚みとバランスをもたらすポジティブな補強といえそうです。

5.FW

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MFとは異なり、(岡崎という稀な成功事例はあるものの)選手の育成が難しく、どうしても助っ人の決定力に頼らざるを得ないのがFW。

在籍年数をみても、最長はトータル6年半所属した大前元紀。一方、外国籍選手は長くても2年でチームを離れています。

また、下部組織出身の選手が数多く昇格していますが、期待通りの成長を見せた選手は少なく、目立つのは5年在籍した北川航也ぐらい。
結果が求められるシビアなポジションですが、清水から世界に旅立つ選手が1人でも多く輩出できることを期待したいものです。

今季は3人の新戦力を迎え、特殊なレギュレーションもあり、非常に激しいスタメン争いが予想されます。現時点では開幕時にどの選手がピッチに立っているか全く見通せず、とても楽しみです。

6.まとめ

今季の在籍選手をまとめたのが下図。

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血の入れ替えを敢行しつつ、年齢のバランスにも配慮した、躍進が期待できそうな編成になっていると思います。
(このメンバーにロティーナ監督を迎えて勝てなかったら、どうすればいいんだろう…)

また、ロティーナ監督のサッカーへの順応という意味では、若干後ろの方の選手層の薄さは気になりますが、4バックと3バックの可変も可能なメンバーになっています。

【4バック】

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【3バック】

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ここ10年の歩みを振り返ると、本当にいろいろなことがあったのを思い出されますが、クラブは過去の経験から学んだことをチーム編成に活かしていると感じます

今季の新たな試みがどんな成果を生むのか、まだ誰にもわかりませんが、このチャレンジを血肉として、将来にわたって強い清水エスパルスを作り上げるための礎としてほしいと思います。

すぐに結果は出ないかもしれませんが、期待するだけの材料は揃っていると思うので、粘り強く応援していきましょう!

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