【エスパルス】2019年J1第23節 vs札幌(H)【Review】

正直すぐにでも忘れてしまいたい試合ですが、前を向いて次の試合を迎えるためにも、自分自身の勉強のためにも、簡単に振り返っておきます。
振り返りのポイントは「札幌の狙い」「エスパルスになにができたのか」です。

1.札幌の狙い

【エスパルスの不安要素1・システムの噛み合わせ】
システムは、エスパルスが4-4-2、札幌は3-4-2-1でスタート。
まずは札幌のビルドアップと、エスパルスの守備を見ていきます。

札幌のビルドアップは、ペドロヴィッチ監督が確立し、4バックの弱点を殴り続ける、かの有名な「ミシャ式」と呼ばれる方法。戦術に明るい方にとっては「釈迦に説法」でしょうが、自分はまだ整理できていないので、試合中に見られた形を図示してみました。

(注)実線:ボールの動き、点線:人の動き(赤線は攻撃側の狙い)

(1)札幌は2CHのうち1枚がディフェンスラインに下り、疑似4バックを形成。エスパルスの2FW(1列目)に対し、アンカー然に振る舞うCHとともに数的優位(5vs2)を確保。
エスパルスの2FWがボールホルダーにプレッシャーをかけようとしても、切るべきパスコースが無数にあるため、プレスは実質的に無効化される。

(2)上記の仕組みで数的優位を得たことにより、札幌は主にサイドバック化したCBが持ち上がり、ここを起点にエスパルスの中盤のライン(2列目)を突破しにかかる。

(3)札幌はWBがウイング化することで、エスパルスのディフェンスラインに対して5vs4の数的優位を確保。札幌の選手の立ち位置が、エスパルスの2列目と3列目(ディフェンスライン)のちょうど中間にあたるため、エスパルスの2列目の選手は背後が数的不利なので安易に前からプレッシャーをかけられず、3列目の選手も1人で2人を見なければならない状況を強いられます。

札幌(上図では福森)による2列目の攻略手段は、この試合で見られたものだけでも4通り。
①WB(菅)を使ったサイド攻撃

シンプルに縦を使うと、立田に対して2vs1が作れる上、クロスを上げれば空飛ぶ戦術兵器(ジェイ)が待ち受けているため、非常に厄介です。まずはこれを避けなければなりません。

②下りてきたシャドー(チャナティップ)を使ったライン間攻略

金子が縦を切るなどして①を防ぐと、チャナティップがボールを受けに来ます。空いたハーフスペースにはWB(菅)がスライドし、CB(福森)が大外をオーバーラップすることで、サイドで3vs2の数的優位を作ります。WBはジェイに預け、自らが裏を狙うケースも。

③CH(荒野)を経由した中央突破

②のケースで、ヘナトがチャナティップをケアするなどしてサイド攻撃が難しい場合、CH(荒野)経由で中央を狙います。最も危険なジェイへのパスコースを切る必要があるので、エスパルスのダブルボランチは中を締めながらCHにプレッシャーをかけに行きますが、そうするとエスパルスのボランチ脇にシャドーが下りてきてボールを引き出します。
※応用として③’(CHを経由せず、CBから直接ジェイに放り込み→シャドーにフリック)もある

④逆サイドのWB(白井)を使ったサイド攻撃

①~③を防ぐには、エスパルスの中盤が距離を縮めて全体でボールサイドへスライドするしかありませんが、逆サイドで幅を取っているWBがフリーになります。
松原が始めからWBをケアしていると、鈴木にCB-SB間を使われるため、ボールが出てから対応するしかありません。

これだけの手段があると、エスパルスの2列目の選手はどれかを防ごうとすると他の方法を消せないジレンマに陥り、「1つに絞れないから考える→ディフェンスが後手になる→簡単に抜かれる」という某マンガのような流れに。エスパルスの選手は、頭の中が整理できなくなるうえ、ポジションを動かされて体も疲弊していき、格闘ゲームの「ハメ技」のような状態でシステムの弱点を殴られ続けます。
反面、札幌側からみると、このような「型」があるからこそポジションチェンジやボール回しがスムーズかつオートマティックに進み、頭も体も余裕のある状態をキープできたのでしょう。

【エスパルスの不安要素2・ボール保持時の攻撃とリスクマネジメント】
上記のようなシステムの構造的な優位性を持っていることに加え、早い段階で先制点を取ったことで無理に攻める必要のない状況を作り出した札幌は、エスパルスにボールを持たせて、カウンターを狙います。

前半23分、2失点目直前の、エスパルスがボールを持っている場面。
竹内からドウグラスへ縦パスが入りますが、福森がタイトにマークしておりボールはカットされ、チャナティップのもとへ。ここをケアしている選手はおらず、フリーな状態でゴール前まで運ばれてしまいました(この後、サイドを上がってきた菅にクロスをあげられ、ジェイに叩き込まれる)。

ここで言いたいのは、竹内の縦パスの是非ではなく、「なぜ竹内はジェイと同じポジションから縦パスを出さざるを得なかったのか」ということです。エスパルスはジェイに対して4vs1の数的優位を確保しているにもかかわらず、です。
これは、相手の1列目を突破できていない、つまり「ビルドアップに失敗している」ことを示しています。もしディフェンスラインからの組み立てに成功し、相手を押し込んだ状態にしていたらどうなっていたでしょうか。

札幌は、自陣に撤退して守備をする場合、5-4-1の形を取ります。
エスパルスが相手を押し込んでいれば、ボランチの2人は相手の2列目を前向きの視野で捉えることができます。仮に立田が持ち上がり、ドウグラスに縦パスが入ったとして、福森にカットされてボールがこぼれても、CH(竹内)がすぐにアプローチできるので、相手に前を向かせないどころか、SH(金子)と連携してボールを即時奪還し、大きなチャンスを生むことだってできたかもしれません。ボール奪取に失敗しても、ジェイには2CBで対応できているので、簡単にはやられません。

ここで指摘しておきたいのは、エスパルスがボールを保持した状態での攻撃を想定しておらず、①札幌のようなボール保持の「型」を持っていない点、②メンバー構成がボール保持を前提にしたものになっていない点、③上記に起因するリスクマネジメントの乏しさ です。
1-0で勝利した直近2戦(横浜FM、松本)を思い起こしてみても、基本的には相手にボールを持たせるものの、陣形をコンパクトに保って相手のミスを誘い、カウンターで仕留めるという戦い方を貫いてきました。
それ自体に全く問題はなく、むしろ現在エスパルスが置かれている立場や戦力を考えれば、最も理にかなった方法です。ただし、相手がボール保持を放棄してきた場合には、諸刃の剣となって返ってきます。

この試合の後半、エスパルスは攻撃的な選手を次々に投入して得点を狙いましたが、前線に居並ぶ選手たちにボールを届ける手段がないまま、後方から出るボールを札幌の2列目にことごとくカットされ、ディフェンスラインを晒された状態でカウンターを受け続けました。
エスパルスの「堅く守ってカウンター」というゲームプランも、後半開始直後の3失点目で完全に崩壊し、ここまで選手たちがハードワークと献身性で紡いできた細い緊張の糸も切れてしまったのだと思います。

0-8という結果を自分の稚拙な言葉で総括するならば、エスパルスの戦い方が90分間を通して札幌の狙い(戦術)に完全にハマってしまったと言うほかありません。それでも、システムの構造上の不利や、ボールを持たされた場合の対策がなにかあったのではないかと思い、2回ほど試合を見返しましたが、結局自分の中で整理することはできませんでした。

2.エスパルスになにができたのか

そんな試合でも、わずかに感じた光明と、エスパルスにどんな対策が考えられたのか、一生懸命考えてみました。
まずはポジティブに捉えたい場面から。

前半38分、ヘナトが中盤でボールを持った場面。
先ほど「不安要素2」で指摘した場面とは異なり、相手を押し込んだ状態で、かつヘナトが持ち上がっているのがポイントです。

ヘナトは守備面で特筆すべき貢献をする一方で、ビルドアップに関与することはあまりありません。それがボール回しが停滞する原因になることもあるのですが、この場面では、彼が優れたプレービジョンを持つ選手であることを証明してくれました。
相手のライン間で絶妙なポジションを取る河井を発見すると、力強い持ち出しからトーキック気味に相手のCH間を通すパスを披露。ボールを受けた河井も、トラップと同時に素晴らしいターンで前を向くと、裏に飛び出したドウグラスにスルーパス。GKとの1vs1につなげました。
(このシーンは、是非動画で見てください)

「型」がないエスパルスのビルドアップにおいて、パスの出し手として存在感を発揮しているのは「キャプテン・竹内」です。狭いところを縦パスで通す技術、サイドに出すと見せて中央に出すスキルなど、素晴らしいものを持っていますが、エウシーニョがいない日などはボールを散らす役割をほぼ1人でこなさなければならず、過大なタスクが彼にのしかかっています。
この場面のように、ヘナトがボールの出し手として振る舞えると、1段と攻撃の幅が広がります。また、ヘナトが迷わずボールを出せたのは、受け手が狭い空間でも技術を発揮できる河井だったことも無関係ではないはずです。このコンビネーションは、今後の戦いにも必ず活きてくると思います。

続いて、エスパルスの採り得た対策について。

前章で触れたように、戦術もリソースもカウンターに特化したものである以上、試合終盤まで粘り強く戦って、ワンチャンスをモノにするしかなかったはずです。
この試合でも篠田監督は、より敵のゴールに近い位置で相手のパスを引っかけてカウンターを狙いたいという考え方から、ここ2戦と同じく4-4-2の形で挑んだように見えました。ただ、こと札幌に関しては、冒頭で述べたように2FWのプレスが空転する可能性が高いため、ある程度リトリートする方が得策だったと思います。具体的には、河井を2列目に落として中盤を5枚にして中央・サイドのスペースを消す方法があったのではないでしょうか。攻撃はドウグラス+金子・西澤の飛び出しに賭ける形にはなりますが、現実的な手段なのではないかと考えます。

3.今後に向けて

次節は昨年の覇者・川崎とのアウェーゲーム。当然強い相手ですが、基本的にはボールを保持するスタイルなので、エスパルスの良さも出しやすい相手なのではないかと思います。
ただし、同じボール保持のスタイルでも、横浜FMなどとは異なり、ビルドアップからバイタルエリアの崩しに即興性が高いタイプに見えるので、人の動きを見て対応するというよりは、ゾーンを守るという考え方が大事なのではないでしょうか。
大敗の直後で難しい試合となりますが、選手・サポーターともに、篠田監督の言うように「目の前の1試合に全力で挑む」気概を持って、前を向いて頑張りましょう。

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