2日目

 よく晴れている。夏は暑い。この街のアスファルトをすべて破壊して、あらわになった土壌に住民みんなで水道水を撒き散らし、束の間の涼しさを楽しみたい。
 日本国の夏が暑いのは、遠い昔に隕石が地球の地軸を変えたがゆえの現象であり、エアコン設置業者の予約が8月まで取れないだとか、熱中症になりかけただとか、日焼け止めクリームで肌が荒れただとか、そんな文句の矛先は全部、6,500万年前の隕石にぶつけるべきなのである。暑いからと言って、家族やサービス業者に八つ当たりするのは正しくないし、何の生産性もない。

 先日は近所の神社の祭りがあったので暮れに散策した。街には屋台が立ち並び、明るい髪色の中年男性がしかめ面でやきそばを調理しているのが目に入る。熱中症対策かマスクはしていない。コロナウイルスは未だ収束せずとも、人々の生活は無理やりに軌道修正されつつある。
 境内の人出はそこそこ、赤い鳥居の前でお辞儀を一つして、お参りをさせていただく。水の枯れた手水舎に申し訳程度に置かれていたアルコール消毒液のボトルはこのたび撤去され、代わりに柄杓と手水鉢たっぷりの水が用意されていた。アルコールボトルと垂れ流しの水道水、運転コストはどちらが安いのだろうと若干バチ当たりなことを考えつつ、バシャバシャと自身を清める。水の透明度と程よい冷たさが神社の荘厳な雰囲気を演出する。実感の伴う夏が帰ってきた。

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