本と運命とは

神保町の三省堂一階に、おみくじを引き、書かれた番号の覆面文庫本を買おう、みたいなコーナーがある。ガチャガチャ、とは違うけど、そういった博打の魅力には抗い難い。
一冊目は、碧野 圭の『菜の花食堂のささやかな事件簿』だった。話は何というか、今流行りの食べ物×単発の事件解決物…みたいな感じのコンセプト。日常で見落としがちな「ささやかな」変化、機微を丁寧に描く。一晩で読めるさっくりとしたわかりやすい文だった。ただ、内容よりもびっくりしたのは、舞台が前住んでいた武蔵小金井界隈だったこと。「武蔵野のどこか」みたいなぼかしかたはされていたが、駅を出て南下するとすぐ現れる坂道、農協の店、はけのもり美術館(の中のシュークリームは絶品)など、武蔵小金井の情報とぴったり合う。まだこちらに越して2年と少しだが、のんびりとした構えの武蔵小金井あたりが懐かしくなってきた。
舞台の理由は明確で、作者が学芸大出身であり、(おそらく)そのままその界隈にお住まいだからだった。こんな所でも運命じみたものを感じて、あながち書店員さんの手による物でもおみくじは侮れんぞと思う。あと、手書き(?)のおすすめコメントもついてきて、その字が可愛いのもよかった。

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