『筺底のエルピス2 -夏の終わり-』を読みました

お疲れ様です。
しめさばです🐟

今回も読書感想noteです。
よろしくお願いします。

●読んだ本

さて、今回は『筺底のエルピス2 -夏の終わり-』を読みました。
前回の記事でご紹介した本の続きです。

一応、読書感想noteとして、前回お伝えしたように「未読者に向けたざっくりとした感想」と、「ネタバレありの既読者向け感想」に分けて書きますが、今回は2巻なので、1巻を読んでいない人に向けて話せることはほぼほぼないので、前者の感想はめちゃくちゃ短くなると思います。
ご了承ください。


●ざっくり感想(総括)


筺底のエルピス1巻を読んだ方は、必ず「もっと楽しめる」内容になっていました。
1巻で積み上げた設定や世界観のより深くへ潜っていき、より深い絶望感を味わう(1巻もひたすら絶望しながら一縷の望みに手を伸ばす展開だったので……)楽しみがある巻でしたね。
バトルモノの本が好きな方はもちろん、SFが好きな方にも是非読んでいただきたいです。
1巻の感想noteも2巻の感想note(この記事)も読んでいるのにまだ買っていないあなた! 買いましょう! 読みましょう!

と、いった程度ですね。未読者向けへの感想は……。
1巻のnoteよりも当たり障りのない内容になってしまいましたが、1巻のnoteで「この物語の良さ」は2巻でももちろん失われていないので、本当にこれくらいしか書くことがない……!
未読の方とは、短くなってしまいましたがここでお別れしましょう。
読んでくださりありがとうございました。



●ネタバレあり感想


私はある料理番組を見ています。

料理人「今回はA5黒毛和牛を使っていきます。見てくださいこのサシ! 綺麗ですね~それでいて赤身もしっかりと締まっていて美味しそうです。ここにアルプスから取れた岩塩と、選び抜いたスパイスで下味をつけていきます」

私「すごい素材だ……」

料理人「さて、下味をつけたお肉をフライパンでじっくり焼きますよ。しっかりとあたためたフライパンに薄く油を敷いてから、丁寧に載せていきます。中火でジュワーッと表面を10秒ほど焼き上げ、焼き色がついたのを確認したら今度は裏面! 同じように10秒ほど焼き目をつけていきます。そうしたら弱火にして、肉が固くならないようにゆっくりと焼いていきますよ~。うーん、いい匂いがしてきましたね」

私「美味しそう!」

料理人「よし! いい感じに火が通ったので、一旦このお肉はゴミ箱に捨てます!

私「!?!?」

料理人「お肉はゴミ箱に捨てますが、『お肉をゴミ箱に捨てた』ということはしっかり覚えておいてくださいね。それでは、新しい食材はこちらです。ドン! 見てくださいこの大きなフォアグラ! 今からこれを――」

びっくりしてテレビ消しちゃった……。


という感じですね!!!!!!!!

あれ!?!? 1巻で丁寧に丁寧に積み上げてきた世界観は!?!?
「ここが守るべき主戦場なんだな~」と思ってた大前提の一つが2巻目にして消えちゃったんですけど……おかしいな……。
これだけ裏切られても、ただびっくりするだけで、憤りが湧いてこないのはやっぱり設定がしっかり作りこまれてるからなんだろうな……。1巻で「抜かりない」という感想を言いましたけど、そういう小説なので、やっぱりドでかい新事実や新展開が出てきても「そうはならんやろ!!」という気持ちにはまったくならないんですよ。本当に、すごい。

まあこの感想は2巻を「読み切った」感想なので、その途中の感想も書いてゆきましょう。

まず、今回もギミックがすごかったですね。
初めて出てきた青鬼にもゾクッとしたし、纏いのスイッチも、なんておぞましいことを考えるんだ……という設定だったし……。
こう、やっぱり私も書き手なので、読んでいる途中でなんとなく、出てきた設定の活用のされ方とかを予想してしまうところがあるのですが、この作品に限っては、かすることはあっても完全に予測することはまったくできてませんね今のところ……。
1巻を読んだ時点で、「鬼を使ってくる敵は出て来そうだな~」とは思っていたのですが、まさか装備してくるとは(しかもあんな方法で)……。
予想を裏切られる(上回られる)気持ちよさがありますね、この作品には。

そして、これはギミックの話からはちょっと逸れてしまうのですが、完全に予想が合っていた部分がありまして、予想が当たったら当たったで興奮するんですよね!
私が予想を的中させたのは「THE EYE」の正体でした。多分、1巻を読んでいなければ(1巻を読まずに2巻を読むことはまあないけれども……)想像もつかなかったし、そもそもその方向性で考えることもなかったと思うのですが、1巻で堂々とバチカンの人たちが出てきたじゃないですか。しかも、歴史上の大きな事件も“鬼”が原因で起こっているというようなことも書かれていて……。
その流れを汲んだ上で「THE EYE」とか明らかに「目」をモチーフにしてる組織が出て来ちゃったらそりゃ「フリーメイソン」か「イルミナティ」でしょ、となり……案の定、という感じでした。
でもこう……歴史上の大きな組織が物語に登場するのってどうしてこんなに興奮するんでしょうね……すごい嬉しくなっちゃうんだよなぁ。
組織の性質や構造もきっと今後の展開にかかわってくると思うので、めちゃくちゃ楽しみです。

さて、相変わらず一冊に何度も山場があって一生盛り上がってしまうのがエルピスなのですが、一番私が「感動した」山場は、やはりスティングとの戦いでした。
なぜって、それはもちろん、キャラクターたちの心情が、しっかりと『戦闘方法』に出た上に、そうでありながら、理詰めで勝利を収めたからです。
やっぱり『感情』と『理論』って、両立させるのが難しく、こと戦闘シーンでは、『感情』を優先しすぎると、「ご都合主義じゃね?」という戦闘になりやすく、『理論』に寄せすぎると目が滑るし、あまり熱い気持ちにならない……といった感じで、バランスをとるのがすごく難しいんですよね。
でも、エルピス2巻のこの戦闘は、本当に素晴らしかった……。
誰かを守れなかった過去を忘れられない圭、圭のように誰かを守れるようになりたい叶、恐怖と怒りでしか動けない自分にコンプレックスのある冬九郎。“あの3人”が戦って、“あの3人”であったからできた結果をもぎ取る。その構造が本当に美しかったし、感動的でした。
圭はひたすらに自分が標的になり続けるように戦局をコントロールして、叶は自分に何ができるかを考え続けているところがめちゃくちゃ良かったですね。そして、その壮絶な心中を丁寧に丁寧に書くことで、読者はすっかり冬九郎のことを忘れるわけですよ。圭の心情が描写されている時も、目の前の戦闘でいっぱいいっぱいになってる彼の頭の中に「姥山さん」の文字は出てこないわけですしね。
本当に読者をだますのが上手いなぁと感心しながら、戦闘後の冬九郎と圭の会話で胸が温まりました。

そして第二の見どころといえば、やっぱり宗佑の闘いっぷりですよね……。
1巻ではとにかく強いことだけは提示されていたものの、実際にその強さを目の当たりにすることはなかったわけで。
門部が攻められる状況になった時に、その切り札として宗佑が控えていることは読んでいて分かるのに、その実力が今まで散々ひた隠しにされていたせいで、まったく安心ができない。
しかも敵には「これどうやって勝つんだよ……」というレベルの敵が出てきて……というお膳立てからの、あの大活躍ですよ。
かっこいいと思わざるを得ない。当主代行はやっぱりヒーローだったんや……。

そうやって死に物狂いで守った(守ったと思わされていた)門部はあっさり陥落。
「えっ!?!?」と思っている間に話はサクサクと進んで、気付いたら読み終わってました。

この引っ張り方はひどい!!!!

これだけ熱い戦いを繰り広げまくった挙句に、「勝敗は未来に委ねる」で現在を凍結しちゃうのやばすぎました。
ひねくれてるのか直球なのか分からない形でタイトルを回収するな!!!

そして、やっぱりなと思う形でまた出てきた奥菜正惟の名前。いろいろ考えても嫌な予感しかしない……。
1巻→2巻とどんどん状況が絶望的になっていってますが、3巻にも全然希望が湧いてこない感じ、つらいけど最高ですね……。
どうなるのか、ドキドキしながら読もうと思います。

前回と同じく、まだまだ書きたいことはある気がしますが、どんどんまとまらなくなりそうなので、このあたりにしておきますよ!

読んでくださりありがとうございました。
3巻ももちろん感想書きます。

しめさばでした🐟

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