見出し画像

3年記念日

母に言われて気がついた。
この家に引っ越して、もう3年が経つらしい。

引越し先が決まって、初めて足を踏み入れた日のことを思い出す。
母に「こんな家じゃ恥ずかしくて友達も呼べない」と ひどいことを言ってしまった。
申し訳なさそうに謝った母の顔を、私は一生忘れられないだろう。

私は、前の家が大好きだった。白が基調の一軒家。
おしゃれな間接照明に、吹き抜けと天窓。
姉妹別々の子供部屋。
その大好きだった家には、今は別の誰かが住んでいるらしい。

引越しの理由は、あまり良いものではなかった。
それ故に、無意識に新しい家の粗探しばかりしていた。無いものばかりが目についた。

でも、今ならわかる。

床暖房や食洗機がある有り難み。
自分専用の部屋が、どれほど贅沢なものなのか。
母がどんな思いで家を手放したのか。
自分がどれほど母を傷つけてしまったのか、も。


ここに住んで3年が経った今、この家が大好きだと、胸を張って言える。

母が料理をしていると、換気扇からいい匂いが漂ってくるお風呂場。
家族3人、寝付くまでおしゃべりして、毎日修学旅行みたいな寝室。
妹が隣にいて、楽しくて全然集中できない子供部屋。

家の隅々まで、思い出がぎゅっと詰まっている。
いつでも、私の居場所はここにある。


3年あっという間だったね、なんて話していると、
「いつかここに彼氏連れてきてくれる?」と母に訊かれ、胸が痛んだ。私の犯した過ちは大きい。
「連れてくるよ。彼氏できたら、ね。笑」と答えた。
これで伝わっているだろうか。

4年目もよろしく。愛すべきマイホーム。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?