友達

よく考えたら、今の自分には友達というものが全然いない。昔に比べりゃ、知り合いは増えたけれど、友達は減ったような気がする。ちょい遊ぼうやー、おん、ええでー、ほな駅前のミスドに5時で、ほいほいー、と言い合える仲の人が、ほとんどおらず、2人か、せいぜい3人といったところである(相方を含む)。

歳を取るにつれて、最低限の礼儀をわきまえた関係の知り合いばかりが増えてしまって、それはきっと、友達とは呼べない。もしよろしければご連絡ください。ご連絡ありがとうございます。こちらは大丈夫です。何時頃に致しますか?では、駅前のミスタードーナツに五時でいかがでしょうか?ご都合が悪い場合はまたお知らせください。いえ、それで構いません。では、五時にミスタードーナツで、よろしくお願い致します。了解致しました。こちらこそ、よろしくお願い致します。

誰かから遊びのお誘いメールや電話が来ることも、ほとんど無くなってしまった。メールフォルダを開いても、舞台に関する打ち合わせのやり取り、予約メールなどの管理、その他業務的な連絡事項ばかりが並んでいる。どうしても、そういった関係の人たちばかりが増えてしまって、よろしくお願い致します、了解致しました、の応酬だらけである。

何ともつまらない。本当のことを言うと、自分は、致したくは無い。ただ友達とミスタードーナツへ行って、ドーナツを食べたいだけなのだ。食べさせて頂きたくは無い。今になって自分は年甲斐も無く、友達が欲しいという目標を持ってしまった。かといって、同年代で気の合う奴と今すぐ出会うとも限らない。出会うのは業者上の人たちばかりである。では、一体どうすれば良いのか。

答えは簡単に出た。知り合いの人に、友達になって貰えば良いのだ。つまり今は業務的な間柄の方だが、ある程度どんな人なのかは知っている。こちらから歩み寄れば、ひょっとすると、友達になってくれるかもしれない。ひとまず自分は、今度我が店でライヴをしてくれる、とある方に、普段ならば了解致してよろしくお願い致すところを、敢えて砕けた調子の文体に変えて、メールを送ってみることにした。

「おーす。今度のライヴやけど17時には店開けとくからテキトーにリハしてな。それで本番たのんま」

今のところ返信は無いが、これでもしかすると、この人と友達になれるかもしれない。一緒にミスタードーナツへ行ける日もそう遠くは無いだろう。

何もいりません。舞台に来てください。