起きれば昼の一時、そこからもう少しごろごろして、飲まず食わずでごろごろを繰り返して、三時。肩と首と頭が痛い。むくりと起き上がったが、どうにもこれは、駄目です。何もする気が起きません。思考も回りません。

部屋を見渡すと、昨日取り込んだ洗濯物が床に散乱している。畳もうと思ったが、一枚、二枚、と畳んだところで身体が停止した。口を開けながら虚空を見つめた後、はっとして、また一枚、二枚と畳んで再開するが、動きが止まる。四枚畳んだところで、なぜか全身全霊疲れ果てて、倒れ込んだ。病人やないか。空腹だが何も食べる気が起きない。天井には死んだ虫が貼り付いている。

閣議決定致します。今日一日は捨てる案。賛成多数、可決です。野党からの反対も無く、堂々たる気持ちで怠惰の沼に身を投じた。それでも心のどこかでは、そんなことでは駄目だよ、と問いかける世論も、確かに存在していた。

女のメンスではないけれども、月に一度か二度、こうした日がやって来る。沼は、はまり込むと抜け出すことに苦労する。外は夕暮れ、五時になっていた。相方から連絡があり、外出する決心がついた。顔も洗わず、ぼさぼさ眼鏡ジャージのまま、外に出て、チャリを漕ぎ、サ店で相方と会った。何やかんやとライヴや漫才の話などをしたが、どうにも思考は巡らなかった。夜八時、外に出て気が付く。あ、まだ何も食うてない、珈琲飲んだだけや。急に焦燥に駆られて、定食屋に入って塩鯖定食を食べた。美味しかった。

満腹にはなったが、相変わらず肩、首、頭が痛い。このまま家に帰っても、残りの洗濯物を畳むことは不可能である。捨てた一日を取り返そうとは思わないが、癒やされたい。財布を開いて小銭を数えると、僅かに残っている。閣議決定致します。チャリに乗って自分は風呂屋へと向かった。こういう沼の日は、大概の場合、風呂が全てを解決してくれるのだ。

熱い風呂に浸かり、熱いサウナで汗を流すと、痛みも少しはマシになった。テレビでは、ピストルを強奪した男のニュースが流れていた。街を歩くと夜風が気持ちが良い。いつの間にか沼から脱出していた。チャリにまたがり、きっといいいつううか、君のパパもほぉ、分かあってぇ、くれるさぁ、と歌って爆走したら、ジャージのポケットから携帯電話がこぼれ落ちて、アスファルトに落下、拾って見ると、見事ディスプレイが粉々に割れていた。横着して、スマートフォンケースを付けなかったことが原因である。それでも気分は沼から脱出していたので、がびぃん、とコミカルに呟いて、再びチャリで夜を疾走した。

何もいりません。舞台に来てください。