ライヴのため来ていた長い東京滞在も終わった。今は帰りの新幹線でこれを書いている。金こそ尽きたが、別にどうだって良い。東京は風が強かった。日傘をさしても折れるほどで、ビルの隙間からゴミが飛んでくる。貰ったギャラは電車賃と珈琲と煙草に消えた。近頃は舞台の数も増えてきて、そうなるとひとつひとつの宣伝告知もあやふやになってしまって、そんな自分が滅茶苦茶嫌になる。本当はもっと、それぞれのライヴについて噛み締めたい。味わいたい。けれども余韻に浸る間も無くまた次の舞台という感じで、あれ、を見れば、これ、が来て、わあ、と言っているうちに、風のように全てが過ぎてしまう。世間を見れば同じように、次から次へとニュースが流れていく。考えなければならぬことが山積みで、あの娘とキスする暇も無い。なんてことは無いけれど、色々と駆け抜けていく感じがする。8月。たとえキスマークが消えても思い出が消えることは無い。ここらでひとつ、近頃の舞台忘備録とこれからのことを、丁寧に書き留めておこうと思う。

8月5日「ニューロマンチック」は、今回で4度目。我々主催の東京ライヴである。今回のゲストは畑英之とシンクロニシティ。畑さんは大阪で共に「ナイトオブコメディー」をやっていたし、今年は沖縄へも一緒に行った。ダンディな風貌で格好良い、話すとすぐに分かる、真っ直ぐな人だ。シンクロニシティは男女コンビの漫才師、何年か前からM-1グランプリ予選で注目を浴びている。初対面であったが二人とも物腰柔らかく、漫才はキリッと構成で笑わせるタイプであった。今回はコーナーの内容がちっとも定まらなくて、どうせなら「シンクロニシティ」という言葉を含ませたいと思い、行きの新幹線で意味を調べるなどしながら考えた。最初に思いついたのは、誰かがくしゃみをして、そのとき偶然にも同じタイミングで誰かがスイカ割りをしている、という絵だった。ライヴを手伝ってくれている作家の新立さんにその旨をラインすると、ご時世なのでくしゃみは難しいかもしれませんがそれめちゃくちゃ面白そうです、と来たので、とりあえずスイカは買います、と返した。結果、何だかよく分からないコーナーになったが自分は楽しかった。こういうことばかりやりたい。我々の漫才は3本、「嫁」「落とし穴」「ケンジ」をした。もっと面白くやれたと思う。次の日、畑さんから嬉しいラインが届く。ヤングさんのライヴはいつも面白くて格好良くて、そんなライヴに自分も参加出来て嬉しい、といった内容。こちらも嬉しい。次回は10月7日、それでひとまず終わりです。今回のライヴの模様、見れます。

8月7日は「ヤバメンツオブザトーキョー」。村橋ステム主催ライヴである。下北沢の会場は満席の盛り上がり、出演者も東京ライヴシーンを賑わせている面子で、濃い。虹の黄昏とはこないだのオールナイトから一週間ぶりにまた会って、野沢Dとはすかさず互いにおっはーした。トップバッターのGOLFのコントが凄かった。彼は妙に繊細で、ひねくれていて、ゲスで、勿論面白くて、ロマンチックな奴なのだが、その辺りの良さが全て詰まったようなコント、それを一人で見事に演じきっていた。このライヴは基本的にお祭り的テンションで、皆ウケる。ひとつ、これは村橋くんにも伝えたのだが、ライヴのオープニングはやはりいつも大阪のヤバメンツでやるような村橋くんらしい茶番の方が良いのに、と思った。我々は「ぶんちん」をした。終演後は下北沢駅前の路上で打ち上げ、蒸し暑い夜を缶ビールとしょうもないノリで過ごした。

8月8日は「楽屋Aメンバーと友達ライブ」。大阪の楽屋Aという劇場のメンバー(我々も一応入っている…)が友達の芸人をそれぞれ呼ぶ、という趣旨のライヴ。我々は漫才師のガロインを呼んだ。別に友達では無いのだが。他の出演者は昨日のヤバメンツとまるで違う、どちらかというと若い、ポップで楽しそうな人たちが多かった。面白いと楽しいは別物で、どちらが良い悪いでは無い。たとえば先月の「オールヌードスペシャル」は面白いライヴで、その後の「夏休み大戦争」は楽しいライヴ。「ニューロマンチック」が面白いを求めたライヴだとすれば、この「友達ライブ」は楽しさを求めたライヴなのである。だから皆、殊更に仲の良さをアピールしていたし、お客もそれが楽しかったのだと思う。自分はあまり仲の良い人もおらず、初対面の人も多かったので、緊張した。楽屋では勿論誰とも喋らず、相方は消えていた。「ダニ」の漫才をした。ガロイン伴さんが暴れていて、自分は笑いながら止めようとしたけれど、一緒になって暴れたら良かった。

8月9日「WESTANTSの目指せ!ナルゲキ満席ライブ」は、西新宿ナルゲキという劇場で、WESTANTSというのは楽屋Aのユニット、我々は関係無いけれどライヴには呼んでくれた。スピードワゴン小沢さんにそれぞれネタを見てもらって寸評してもらう、という趣旨で、昨日の友達ライブの演者も沢山いた。聞くと、皆で同じ宿に泊まっているらしい。キラキラ青春な感じがした。我々は「自殺」をした。小沢さんは、面白かったよ、こういう面白い漫才が見れるからやっぱりライヴは良い、と、良い言葉をくれたが、当たり障り無い感じで褒めるのみだったので、もっとけなしてください、と言うと、テレビに出たいならちょっと違うやり方をしないと…、という感じであった。次のライヴがあるので先に出た。

そのまま南阿佐ヶ谷へ移動して「煉獄」というライヴにゲスト出演した。先程のキラキラとは打って変わって、土竜のような芸人ばかりいた。主催の柴田ぼんくらとは意外に長い付き合いで、初めて会ったのは約10年前である。後は旧知の漫才師リボンズやズンズンポイポイなどがいた。人員不足のため出囃子なども無く、無音の中を出て行く。我々は「兄弟」をやった。コーナーは爆笑、かなり面白くなったと思う。配信もあるみたいです。

そんな感じで東京ライヴ行脚は終わり。では、今決まっている今後のライヴについても書いておく。

8月11日(木祝)は森ノ宮TTホールに出演する。急遽、金属バットが呼んでくれた。キャパ700人というから凄い。

8月12日(金)は「ヤングのきまぐれベストフレンド」。毎月二人でやっているトークライヴ。色々と言いたい放題。予約など要らないので、気軽に来てもらえたら。配信もあります。

8月13日(土)は「SAKAI NO OWARAI決勝」フェニーチェ堺にて。予選を勝ち上がった芸人VS受けて立つ決勝常連組。ネタでバトルします。我々はMCですが、漫才もやると思います。予約してから来てくれたら嬉しい。

8月14日(日)は「ナイトオブコメディー」。毎月やっている主催ライヴ。このところ色々と思うことあり、9月は一旦休もうと思う。このライヴを自分はとても大切にしていて、だからこそ、変化が必要だと思っている。出演者やライヴ構成や入場料や配信について、今一度考え直す。いつか伝説になるよ。

8月24日、25日はまた東京へ。
24日は居島一平さんのライヴにゲスト出演する。居島さんはこないだ出会った怪物みたいな漫談家。お客のノリも他とは少し違う。楽しみです。

https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2221652&rlsCd=001&lotRlsCd=

25日は「デパチカライブ」。出演者が豪華な感じ。また虹の黄昏もいるし、モダンタイムスもいる。生でにゃんこスターを見れるのが楽しみ。

大阪に戻り、26日は「カギョウ」。にぼしいわし主催のネタライヴ。彼女らはずっと燃えている。気を引き締めなければならぬ。

28日は「雷鳴は ヴォリュームあげて きっと来る さよなら、夏の カメラかかげて」。短歌のライヴ。このライヴに向けて自分も短歌を作らなければならない。どうしよう、どうすりゃよいの、教えてよ。わしは分からん、頭が溶けた。

8月31日は「夏休みの宿題」というライヴ。作家の松谷さんが企画した、ネタではなくコーナーのライヴである。どんなコーナーでも我々がやれば面白くなるよ。

9月1日は「平田ぽーにダメ出ししてもらうライヴ」。我々主催のライヴで、謎のピン芸人平田ぽーにネタのことを色々とアドバイスしてもらおうと思っている。絶対面白くなるよ。


9月4日は「Gakuya-A バトル」。我々がネタバトルライヴに出ることは珍しいです。負けたら面倒くさい。

9月14日は「鶴」。ももが呼んでくれた。森ノ宮よしもと漫才劇場に再び立つ。久しぶりに共演出来ることが嬉しい。にしても、鶴…。

9月23日は「持つ」というライヴ。こちらも作家の松谷企画。ヤングと椅子のツーマンライヴ。椅子というのは誰や、と思うかもしれませんが、若手の漫才師のもうひとつの名前です。今、結構人気あるようです。会えるのが楽しみ。

と、こんなところで。気になるやつがあればお越し。ライヴに来てくれることが一番嬉しい。後は勝手に面白がって欲しい。疲れたときには休めば良い。孤独なきみには星を投げてあげよう。新幹線はスピードが速い。ここまで書いて、もうすぐ京都。私は眠くて眠くて、今から少し寝ようと思います。新大阪できちんと起きれますように…。

何もいりません。舞台に来てください。