今そば

「今そばにいるお前はあくまで今そばにいるだけであり、いつかは必ずどこかへ行ってしまうのかと思うと無性に寂しい気持ちにもなるが、だからこそ、今そばにいるお前を今おれは大切にした方がええんちゃうかな、と思う。そしてまた、おれも同じく、今ここにいるだけで、いつまでもおれがここにいると思うなよ。どの道おれもお前も待ち受けているのは破滅以外には考えられぬ。だから今はお互いに、ひもじい顔つきで、空虚の穴を埋めるように、ただ、そばにいれば良いと思わんかい?」

そう言うと、小さなマルチーズはこちらをじっと見つめてハァハァと舌を出した。それからどこかへ、てくてくと去って行った。まだ行かんといてよ。

何もいりません。舞台に来てください。