アイラブユーでお願い!

芸人というのは人気商売かもしれぬが、あまり人気ばかりを気にしていても仕方無い。大体、性根の腐った屑のような人間が他人に好かれること、それ自体が異常であり、本来ならば石を投げられて虐げられても何の文句も言えまい。自分なんぞは大して人気も無い漫才師であるが、それでも好いてくれる人が何人かいて、しかし、彼や彼女のために漫才を演るのかといえば、そんなことは一切無かった。お客にはいつも感謝していて、きっと向こうもこちらに感謝している(と信じている)。出演者と観客、所詮は似たもの同士のため、互いに敬愛があれば、素晴らしい空間が生まれて良い舞台になる。

ファンなどという言葉はあまり好きでは無いが、敢えてファンと呼ぶ、人気が出てファンが増えれば、さぞ楽しかろう。褒められて惚れられて、何人かの女性ファンは臭い股すら開くかもしれぬ。色々な欲を満たせて万々歳かと思いきや、そのせいで己の舞台がつまらなくなったら元も子も無い。頭の悪いファンはその辺りを理解出来ぬようで (近頃は、ワーキャーファンなどという、いかにも頭の悪そうな名称の、凶悪なファンもいるらしいネ)、彼や彼女たちは涎を垂らしてチケットを買い漁り、時には非常識たる下衆な行動も平気で取るらしい。そして飽きればすぐに消えて行くという。しかしファンはそれで良いのかもしれない。金銭を支払っている以上、それ相応の楽しみを自由にやれば良い。芸人こそ、身勝手なことばかりやって、時には周りに迷惑も掛けているのだから、他人に指図など出来るはずも無い。目クジラを立てずに、ただ真っ直ぐ、芸に取り組んでさえいれば、その姿を見てくれている人が必ずいる。自分の場合、ファンなんてどうでも良くて、ただ見てもらえたら、それで良い。

果たして自分は、人気が欲しいのだろうか。捻くれ蒟蒻な心には、「人気欲しい~チヤホヤされてぇ~」と「人気者になんぞ死んでもなりたくねぇ~」という二つの対極が入り混じっている。一体これはどういうことか?つまり、「自分が良いナと思う人から、良いナと思われたい~」ははは、これが本心。好きな人に好かれたい、アイラブユーでお願い!けれども、しょうもない奴や鬱陶しい奴に好かれるのはマジ勘弁。それは極めて我儘な考えであった。

今まで好き勝手やってきて、何人かの人には物凄く嫌われたこともあった(調子乗んなっ!とか、謝れっ!とか、〇〇さんとは一緒にライヴしないでくださいっ!とかネ)。それでも、あ、そうすか、と他人事のように笑って、ぺてん稼業を続けるような人間である。もしも有名になったら、と思うと、ゾッとする。抹殺されるのではないだろうか。無名で良かった、と思うことの方が多い自分は、死ぬまで売れることは無いだろう。だが、潰れずに面白いことを続けていれば、まだ見ぬあなたにも会えるかもしれない。何とロマンチックな話だろう。

新しいアイデアは、まだまだある。きっと面白くなるだろうと思う。これからも、潰れず、続けるつもりだ。きみに見て欲しい。そして、正々堂々と王道を歩いて、きみを笑わせたい。と、思います。

何もいりません。舞台に来てください。