オンリーユー

出来るだけ素直でいたいけれど、そういうわけにもいかぬ。本当に素直になれば一人ぼっちになってしまいそうで、だから冗談混じりに、へっちゃらぴー、と言う。自分は全然大丈夫では無いが、きっと死ぬ間際にも、あ全然大丈夫やで、と言ってるような気がする。大丈夫なんて自分で自分に言っても気休めにしかならぬが、あのとききみに言われた言葉は今でもずっと信じている。だからずっと元気でいたいし、楽しく暮らしたい。真夜中の喧騒、淀んだ街の空気を吸い込んで、再び煙草に火をつけて、近視の目を細めて、呟く言葉は、オンリーユー。さっきから、人混みを眺めながら、きみだけを探している。きみのおかしな言葉が聞きたい。きみの柔らかいおなかを触りたい。きみの甘い匂いを嗅ぎたい。もしくは子犬を抱っこしたい。ふわふわもふもふの子犬を…、いや、やっぱり、オンリーユーで。うなだれて座り込み、煙草の火をアスファルトで消して、誰にも聞こえないくらいの声で、わんわん、って言っちゃって、ふと顔を上げると、人混みからパッと現れたきみが、こちらに手を振り、走ってやって来て、はぐ、してくれた。

何もいりません。舞台に来てください。