きみのゆめ

マドモアゼル・ユーの夢を見た。なかなか愉快な、ふざけた夢だった。そのことをマドモアゼル・ユーに伝えたら、どうやら彼女は彼女で、私の夢を見ていたという。何とも妙な話である。おやすみ、もうすぐ逢えるね、と歌いながら、互いの夢を行き来して、我々は春を待つ。

マドモアゼル・ユーは、冬の間は寝てばかりいるので、一日の大半を夢の中で過ごす。起きている間は、お茶を飲んだり、ニキビを潰したり、服を畳んだり、している。後は、時折何か思い出したかのように、はっとした顔を浮かべる。特に意味は無いという。天気の良い日には、ベランダに立って、そのまま風に乗ってぴゅーんと飛んで行く。木に停まって、実ったりんごを勝手に食べたり、意味も無く空中をくるくる回ったり、しているらしい。本当だろうか。マドモアゼル・ユーは嘘つきだから、もしかすると、嘘かもしれぬ。彼女にとって、嘘は呼吸のようなものなのだ。以前、あれは確かマドモアゼル・ユーとラブホテルへ行ったときのこと。どこのホテルであったかは覚えていないが、確かそのとき、ベッドに座った彼女が、あたいの背中には星のタトゥーがあるのさ、と矢鱈自慢げに言うので、見てやろうと服を脱がせてみたら、そんなものは無かった。ただの白くて丸い背中があった。え…タトゥー無いやん、と私は言った。何も言わぬマドモアゼル・ユーは悠然と振り向いて、ただ、いたずらに微笑んだ。と、そんな思い出がある。確かあったような気がする。いや、実はあまり覚えていない。あれも、夢の中の出来事だったのかもしれない。

何もいりません。舞台に来てください。