レター

きみへ

今、夜行バスの中でこれを書いています。私は心から後悔しています。一応、少し上等な3列シートにしたのは良いけど、私の席は3列の真ん中で落ち着かない、それに平日だというのに何故か満席で、車内はモワモワしていて少し臭い。ただでさえバスは寝られないのに、これだと全く眠れそうにありません。だからちょっと、暇潰しも兼ねて、この手紙を書いているというわけです。

今日は朝から大慌ての一日でした。せっかくうまく起きれたのに、テレビを見たりスパゲッティーを茹でたりしているうちに時間が過ぎてしまって、案の定大急ぎで家を出てダッシュしたよ。何とか無事、新幹線に間に合って、東京へと向かいました。車内では、こないだ古本屋で買った「三島由紀夫レター教室」を読みました。手紙のやり取りのみで物語が進む小説で、読みやすく、ユーモアたっぷりで面白かった。静岡あたりでちょうど読み終えた。途中、中年の男が若い娘に出した手紙のシーンがすこぶる気持ち悪くて、思わず写真を撮ったので見てください。

最高です。だけど、自分も、ここまででは無いけれど、きみに気持ち悪い内容の手紙を書いたことがあるかもしれない。本当は上のような手紙だって、送り付けたい気持ちも持っている。口では言えないような言葉を恥ずかしげも無く書けてしまうところに、手紙の良さはあります。それはきみも、同じように感じているでしょう。けれどもご注意を。その言葉たちは、相手の元にずっと残されるのです。きっと死んでも、残される。だから本当は、手紙というのは一通一通、切腹覚悟で書くべきなのかもしれない。でも、もっと軽く、レター、って感じで、思いつきの愛情を交換したいような、そんな調子の方が、私は好きです。小説で中年男から手紙を貰った若い娘は、なんかこんな手紙貰ってんけど~、と言いながら若い男にその手紙を見せびらかす。けれどもどこか自慢げで、舞い上がり、そしてその手紙は大切に取っておくことにしたのでした。

さて、夕方、東京に着いたその足で私はライヴ会場へと向かいました。東京駅は広すぎて、方向音痴の私は気が狂いました。いつまで経っても、どこまでも歩いても、丸ノ内線のホームに辿り着けないんです。ぐるぐる周ってようやく電車に乗れた。二度と来たくない街です。きみも、東京へは行かない方が良いよ。

ライヴは、学生芸人たちのネタをゲストが見て品評とアドバイスをするという趣旨でした。そのゲストの内の一組が我々だったのです。本当、困ります。頼まれれば何でもやりますが、妙に持ち上げられたり、凄い方々、みたいな紹介を受けると、どういう顔をすれば良いのか分かりません。しかも、学生たちのネタが皆それなりに面白かったので、余計に困りました。もう少しつまらなければ色々言えたのに、皆さん真剣かつオリジナルな芸を演ろうとしていたので、特に言うことはありませんでした。考えてみれば、10以上も年下の彼らです。本当は一緒にくだらないゲームコーナーとかがしたかったけど、そういうわけにもいきません。ちなみに我々は「文通」の漫才をしました。ほら、あのとき、野音で演ったやつだよ。他の誰にも真似出来ぬ漫才を見せれたと思います。そんな、何ともレターな一日でした。朝には大阪に着きますので、またお返事待ってます。では、このへんで。




何もいりません。舞台に来てください。