カッコー

『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』というレコードを出したのは、早川義夫である。表題となる曲は無く、歌詞に出てくるフレーズでも無い。アルバムのタイトルになっているだけのこの言葉は、何となく意味が分かりそうで分からないが、でも、何となく感じるものはある。

かっこいいこと、とは何だろうか。ひとつは、世間的にかっこいいとされていること。もうひとつは、自分自身でかっこいいと思っていること。誰にでもプライドやかっこつけのナルシズムがあるだろう。私にもある。やはり、気になる女性の前ではクールに見繕って煙草に火を付けたり、遠くを見つめて風の音に耳をすます、などしてしまうときがある。自分としては渾身のかっこいいを演じているつもりだろう、が、傍から見れば、あいつ女の前でめっちゃかっこつけるやん、ダサ、と思われる。かっこいい、と無意識に自分が思っているその全ての言動は、見方を変えると、誰かにとってはとてもかっこわるく映るのかもしれない。

ちなみに早川義夫のこのアルバムは、全曲物悲しいピアノの弾き語りで、まるでポップスとはかけ離れた陰気な歌ばかりである。

何もいりません。舞台に来てください。