野音

もうじき、大阪城野外音楽堂でライヴを行う。野音は、公園の中にある木々に囲まれた広い劇場で、とても良い。鳥や虫の声が聞こえるし、夕暮れの空も見渡せる。もし野音に来たならば、是非、深呼吸することを勧める。

初めて行ったのは、高校生の頃だったと思う。忌野清志郎の「WANTEDツアー」というライヴで、友達と見に行った。あそこで初めて新曲「Baby何もかも」を聴いて、ぶっ飛んだのを覚えている。アンコールで清志郎は自転車に乗って登場し、ステージで自転車を漕ぎながら「自転車ショー歌」という、自動車ショー歌の替え歌を歌った。ライヴハウスやホールとは違う、開放感に包まれた野音は、一言で言うと、最高、であった。いつかここでライヴが演れたらさぞ楽しかろう、と思った。

何年か前に、我々は野音で漫才の単独ライヴを行った。そのとき自分は、オープニングで自転車に乗って登場しようと思ったのだが、職員に「駄目、野音のステージは自転車禁止です」と言われて、ふうん、と拗ねた。ちょうど桜の季節で、客席には公園のお花見客なども来ていた。ステージで漫才をしていると、桜の花びらが一枚、ひらりと目の前を落ちていった。とても愉快な夜だった。

今年、流行り病で世間が騒ぎ出して、暗鬱な雰囲気になったり、真面目な顔で怒ったり、時代が変わるぜ、なんて阿呆なことを言ったり、ライヴが出来ない状態になったり、遠くへ行き辛くなったり、色々あったけれど、正直、自分自身は全く問題も無く、平気で楽しく暮らした。根っこが天の邪鬼なのか、世間が暗鬱になるほど楽しいアイデアが湧いて、そのひとつが野音であった。今もなお、世間のもやもやが晴れる気配は無く、今年来年あたりは大人しくしましょう、と自分でも思う。だが、思いついたことはとりあえずやりたい。もう自分は全てがどうでも良いから、会いたい人に会って、食べたいものを食べるのだ。

高校二年のときに、自分は文化祭委員になって、クラスの文化祭を仕切った。他のクラスがたこ焼きやらお化け屋敷やらをする中、自分たちのクラスは、運動場にステージを作り、そこで一日中ショウをやる、と独断で決めた。その頃から、ショウ、とか言っていた。何度も企画書を書いては生徒指導部の先生に見せて、却下されては反論し、最終的には怒られる覚悟で阿呆なことをやった。あの頃からちっとも変わらず、だから、この野音も、所詮はただのお遊びなのです。自転車に乗って歌う清志郎の姿がずっと頭にある自分は、いつも、真剣に遊べるものを探している。

勿論、やるからには様々な対策もせねばならない。座席作り、検温、消毒、などの感染対策をして、皆が安心して楽しめるような空間を作る。野音で主催するにはそれなりに金も掛かるので(大人になった私は金を使うことを覚えた)、グッズを売って、何とか赤字は避けるつもり。その他、準備や、宣伝や、考えることは山ほどあるのだが、結局最後は何とでもなることを、自分は知っている。金儲けでも無く、社会貢献でも無く、誰かのためでも無く、ただのエゴでも無い。死ぬまで続く疲れた日常に、笑える素敵な出来事を共有したい。

入場無料のライヴというのも、昔から好きだった。チケットを取ったり、予約したり、そうした面倒なことは一切無い。当日の気分と体調で、ふらっと立ち寄ってください。あとは、我々の、溢れる阿呆を存分に浴びてください。笑わせてやる!

10月16日(金)
『ナイトオブコメディー イン 野音』
★出演★
ヤング
クリスタル大坪
村橋ステム
ドリンクバーゲン
畑英之
とびだすエロ本
GOLF
日本クレール
シーチキン佐野
フルーツぴ〜ち大将軍
and more…??
@大阪城野外音楽堂
開場17:00/開演18:00/終演20:00
入場無料
(雨天決行、途中入退場自由)

何もいりません。舞台に来てください。