「宮本から君へ」の実写映画版が公開された。原作は新井英樹の漫画で、自分は20歳くらいのときに友人に勧められて読んだ。それは、とんでもない漫画であった。初めの5話くらいは、まぁ、こういう感じか、と思って読んでいたが、物語が進むにつれて、強烈なえぐみが増していき、後半はもはや狂気の沙汰、けれども男大号泣の人間讃歌、であった。漫画を読んでここまで心がぐつぐつしたのは「狂四郎2030」を読んで以来のことである(こちらの漫画も、とんでもない。マジ、ヤバ)。おそらく胸ヤケするだろうが、とびきりオススメなので、漫画喫茶にでも行って読みたまえ。

実写化ドラマが去年あたりにテレビ放送されていたが、そちらも少し見た。主演の池松壮亮という役者の人は、何とも無骨な男前で、自分は演技のことは分からないけれどこの人は間違いなく素晴らしい役者だと思う、そしてこういう人が評価されている世の中は素敵だと思った。相手役は蒼井優という女優で、死ぬほど素敵で可愛らしい人、それだけでなく、ワイルドな格好良さに溢れていて、つまり完璧な女優である。監督の真利子哲也(まりこてつや、なんちゅう名前や)という人は、以前「ディストラクション・ベイビーズ」という映画を撮り、自分はそれをTSUTAYAで借りて見たが、まったく、滅茶苦茶に面白い映画だった。それこそ新井英樹の「ザ・ワールド・イズ・マイン」や「キーチ!!」のような雰囲気もぷんぷん漂っていて、おそらくかなり影響を受けていると思われる。そして今回の映画の主題歌は、宮本浩次(エレカシ)と横山健(ハイスタ)の二人で作った曲だというから、ここまで太文字の「男」が勢揃いした作品も無いだろう。「男」といっても、決してスタローンやシュワちゃん的なものでは無い。己自身と向き合い、戦い、涙を流して不器用に燃える男の物語である。

ということで、こないだ一人で、天王寺のアポロシネマ(昔ながらの良い感じにダサい映画館)へ見に行った。アポロシネマは無料会員になれば平日1,100円で映画が観られるのだ。子供の頃や学生の頃は、映画といえばアポロシネマであった。どうか潰れずに続けて欲しいと思う。一人で映画館に来るのは久しぶりで、あの匂い、暗さ、に自ずとルンルンした。

肝心の映画は、結構良かったです。

何もいりません。舞台に来てください。