一人のお前と、星と月とUFOとうさぎとギター

アハハって沢山楽しいことを知っていても、心のどこかで虚しさが渦巻き、ふと一人になったとき、それはここぞとばかりに爆発する。夜空を見上げる気にもならなくて、俯いたまんまの春。そして、スマホを覗く顔は見ていられない程の虚無に満ち溢れている。今のお前だ。この後、スマホをオフったときに一瞬映る、暗い画面に浮かび上がる自分自身の顔面。それはアプリの加工写真とは全く違う不細工な素顔。目は細く、口角は下がり、鼻毛少し飛び出し、喉奥は炎症、ついた溜息は生魚臭。あ、今のおれか。

明日もまた誰かの視線を感じながら無理矢理明るく振る舞って、その度に疲労の鉄球が背骨にのしかかる。ちょっと気を抜いたらひょっとしたら涙が出てくるかもしれないから、踏ん張ってカチカチの挨拶を交わす。で、また一人。現在のストレスと未来の不安と過去の後悔とが交差する。寝転んで、ちょっと何か甘いものでも食べたいけど動きたくないし、さみしー。行き場の無い寂しさは、ただじっとりと内側の壁に貼り付いている。石原慎太郎的なおっさんが若干にこやかな顔、でもかなり高圧的で強靭な感じ、なおかつ純粋真っ直ぐな瞳で、「がんばれ!」って言って肩を叩いてくる。お願いですから、もうやめてください。お前に肩を触られるくらいなら、もうずっと一人でもいいです。

お前が一人でいることを私は決して否定したくない。

公園のベンチ、隣に誰かが座っていて、ちら、と顔を見たら自分自身だった、というのは我々の漫才の話だが、本当にそんな出来事は起こりうる。それを不吉と捉えるかロマンチックと捉えるかは想像次第で、つまり何が言いたいかというと、たまには夜空を見るのも良いよ、ということ。ロマンチックなイメージは尽きること無くきらきらと流れていく。暗い夜空には毎晩のように美しいものが沢山浮かんでいて、たとえば星や月やUFOやうさぎやギター。確かに存在するものたち。星が流れて月が踊ってUFOが光って、うさぎが迷子になって、ギターがきょとんとして、って結構面白い。嘘だと思うなら、ほら見上げてごらんなさい。

何もいりません。舞台に来てください。