素直

自分は昔から虚言癖というか、思ってもいない言葉を平気で言ってしまう癖がある。いいね、と心の中では思っていても、あんまりやな、と言ってしまったり、あんまりやな、と心の中では思っているのに、いいっすね、と言ってしまう。また、事あるごとに嘘や悪態をつき、周囲全般を小馬鹿にしている節がある。自分でも原因は分からない。

会話はタイミングと空気感が大事なので、言葉が曖昧でも、声質や表情で相手に心の内が伝わることがある。自分はおそらく、嫌な顔をしながら、好きですね、と言ったり、ニヤニヤしながら、知りませんけどね、と言ったりしているのか、周りからは、お前は何を考えているのか分からない、などと怪しまれたり、お前嘘ついてるやろ、などと言われてドキリとすることも多々ある。

素直になれないのは、漫才をし過ぎたせいなのかもしれない。漫才とは会話のフィクションであり、つまり所詮は出鱈目の応酬、無いことをさも有るかのように言ったりして、平気でひねくれた悪意を積み重ねていく道化である。おそらく、その影響が日常にも及んでいるのではないか。最低ではないか。

そんな自分が最も素直になれるのは、笑っているときで、特に、爆笑している瞬間というのは、完全なる純粋でしかない。そこには嘘や見栄や悪意など無く、ただただ素直な笑顔がある。そして自分が最も爆笑している瞬間というのが、皮肉なことに、芸人の漫才やコントを観ているとき、もしくは自分たちの漫才のネタを作っているとき、なのである。最高ではないか。

何もいりません。舞台に来てください。