無言の丘

「言葉はいつも空回りして、道の上をすべっていく。」という歌があったが、超分かるぅ!ほんとそうじゃんね、と自分の中の褐色ギャルも言っている。声が高くてキンキンするから、少し静かにして欲しい。

大切なことを言葉で誰かに伝えるのは本当に難しい。現に、ほら、自分のnoteなんぞ上っ面の出鱈目ばかり。こんなものは、鉄板にへばりついたもんじゃ焼きを剥がすようなものです。言葉に出来ず、いつも苦労する。ならば舞台はと問われたら、舞台はもっと出鱈目な場所なので、大切なことを言う気にすらならぬ。勿論、それで良い。

言葉は、時に、非力で薄弱だ。あの子にアイラブユーと言ったところで、きっと笑われるだけだろう。あいつに死ねと言ったところで、どうせ死にはしないだろう。便所には無意味な言葉が死ぬほど溢れている。それらがあまりにうるさすぎて、臭すぎて、きみの小さな「イエス」は掻き消されてしまった。

あのとき、その声が自分に聞こえていれば、もう少し違っていたのかもしれない。何と言えば良かったのか?いつも分からず、言葉を探している。自分の気持ちが少しでも伝われば良いのだが、伝わっているのかどうか、今ひとつ分からない。あぁ、面と向かえば、自分はいつも誤魔化してしまう。照れと格好付けが仇となり、つまらぬ、ありふれた言葉でおべんちゃら、時には冷たい顔となり、根暗な声でやり過ごす。あなたにも、そんなときがあるだろう。つい誤魔化して、曖昧なコミュニケーションを取ってはいないか?

けれども本当のところは、もう何でも良くて、どうでも良いのでした。つまり、大切なものを、実は私はひとつも持っていなかったのです。言葉に出来なくても全然良かった。曖昧の持つ美しさを、ただ想う。…ところで、お気づきですか?さっきから何だか臭いませんか。そうです、ここも便所だったのです。私も、あなたも、褐色ギャルも、イエスも、皆便所の中にいたのです。だから…。

便所を飛び出した我々は無言の丘に辿り着いた。そこは、何も無い、静かなところで、最高だった。遠くに浮かぶ街には花火が上がり、どうやらお祭りが始まったらしい。我々には、ちっとも関係無かった。関係無いよな、とすら、言わなかった。もう何も言わなくて良いのだから。無言の丘で、素敵に沈黙。ふふふ、と微笑み、お茶を飲み、また微笑んだ。自分は、笑い声を信じようと思った。

何もいりません。舞台に来てください。