ぶた

自分には何かと折につけてよく描くぶたの絵がある。


ウォンバットと間違えられることもあるのだが、これはぶたであるし、どう見てもぶたに違いない。チラシや宣伝の際、グッズのデザイン、またサインなど書くとき、いつの間にか自分は、まるでシンボルマークのように、このぶたを描くようになってしまった。描くにつれて、ぶたへの愛情は枯れるどころか高まるばかりで、また、誰かに、ぶた可愛い~、などと言われたら、とても嬉しくなる。もっと可愛がってあげて欲しいと思うし、それに、まるで自分が可愛いと言われているかのような錯覚に酔えるから、あぁ、ぶたを描いていて良かったと心から思う。

子供の頃から、ぶたが好きだった。母親がツタヤで借りてきた「ベイブ」のビデオがきっかけだと思う。ぼんやりしながら、ぶたのことを、ずっと考えていた。けれども、ぶたが好きな男なんて格好悪いのではないか、というかキショいのではないか、と思い、恥ずかしくて黙っていた。歳を取るにつれて恥知らずになった自分は、開き直ってぶた好きを公言するようになった。メールなどでもぶたの絵文字を多用して、ぶたのグッズも買う。ぶたの動画も見るし、一人でぶぅぶぅ鳴く夜もある。

このぶたの絵は、子供の頃から描いていた。中学の頃に、4コマ漫画にしたこともあった。また、絵本らしきものを作ったこともある。実は、このぶたには名前もちゃんとあり、本当は色も黄緑色なのだが、その辺りは秘密である。いつでも平気、阿呆みたいな顔をして、よく笑い、よく寝る。何が起きても、きっと大丈夫な、ぶた。

何もいりません。舞台に来てください。