眠れ

もし、ひとつだけ願いが叶うとしたら、自分は、眠りたい、と願う。普段から寝坊の多い自分であるが、実は不眠症で、たとえば次の日は午前10時に起きなければならない、となると、その前日の夜の時点で、明日起きれるのか?と不安で一杯になって何も手につかなくなる。8時間の睡眠と計算すれば午前2時には寝なければならない。しかし、計算通り2時頃に布団に入っても、自分は、まったく眠れない。頭が回りだして、思考が捗る時間帯は大抵夜中なのである。ぐるぐると考え事をしているうちに朝の5時。ヤバい、寝れない、どうしよう、と焦り出して、一旦起き上がり、水を飲む、ストレッチをする、などをして再び布団に潜るが、やはり眠れない。ぐずぐずを繰り返して、ようやく朝の7時頃に眠りについて、結果、寝坊するという体たらくである。

他人の家、車、電車、バス、で眠ることも勿論出来ない。しかし常に眠いので、誰かが側にいようと関係無く、自分はすぐ横になる。おやすみぃ、ふぁぁ、と欠伸しながら目を瞑る。眠れはしないが、身体は少し休めることが出来る。周りからは、こいつまた寝てら、寝坊助野郎やな、と思われるが、本当は、ちっとも眠っていない。

また、次の日は何の予定も無い、好きなだけ寝て良いんだよ、という日でも、ぐっすりと眠れない。3時間ほどで目が覚めては、一服したり本を読んだりして、また3時間眠る、合計6時間眠ってはいるものの、脳も肉体もまるで休息した気配が無く、昼間や夕方にずっと欠伸をしていて、眠いのに眠れない。知り合いに聞くと、それは完全に不眠症だと言われた。

改善するためにホットミルクを飲んだりアロマを焚いたこともあった。まるでOLであるが、効果はそれほど無かった。枕も少し高価なものに買い替えた。それによって首の痛みは少し和らいだが、安眠効果というほどでも無かった。寝る前にスマホを見ると駄目だと聞いて、なるべく布団に入ってからは見ないようにもしている。酒で酔えば眠れるのかもしれないが、自分の場合、酔ったときは決まって悪夢を見るので、あまり飲みたくない。短い睡眠の間にも、夢は見る。不眠が続くと、意味不明の妙な夢が増えるばかりか、日常生活も全て悪夢のように思えてくる。ふらついて、思考も停止する。良いことはひとつも無い。とにかく人間は眠らなければならない。

ここ最近の暮らしといえば、大阪での単独ライヴ、東京でのライヴ、その準備や制作、移動、などに追われて自分としては忙しく、また、店のこと、金のこと、などの不安要素も相まって、脳と肉体は疲弊していた。一通り落ち着いて、一昨日、昨日などはゆっくり出来そうであったが、しかしそれでもぐっすりと眠ることは出来ず、とうとう昨日に至っては夜中に発狂した。

とち狂った自分は、一人で全裸になって焼きそばを大量に平らげてギターで熱唱した挙げ句に嘔吐した。それからの記憶は無いのだが、おそらく自室の床で倒れるように寝たのだろう、ハッと目が覚めると昼だった。全裸で床に転がっていた自分の身体はバキバキになっていて、歯はソースと青海苔まみれであったが、ぐっすりと眠れたので全てオッケーとしよう。おそらく10時間は眠っていたと思う。嬉しい。

何もいりません。舞台に来てください。