海老は食べもの

残る一匹の海老も死んでしまった。水槽にぷかぷかと寂しく浮かんでいた。畜生。しっかりと世話していたつもりなのに、一週間と少しで死ぬなんて、どういうつもりだ。どういう魂胆だ。お前のために公園で石を拾って、水草を買ってきて、水もきちんと換えて、餌も与えていた、おれの気持ちをどうしてくれる。ふざけやがって。だから海老は嫌なんだ。大体、海老なんぞ飼うことがおかしい。そもそも不可能な話で、なぜなら海老は食うためのもの、生き物というより食べ物だから。もう、金輪際、海老は飼わない。食べる。なぜなら好物だから。貴様もフライや天麩羅で食ったろか、と死骸を見ながら思ったが、何か臭いし病気になるのも嫌だったので、単独ライヴのチラシにくるんで捨てた。あぁ、阿呆。

蟹よ、きみは死なないでくれ。蟹。

何もいりません。舞台に来てください。