みどりのひ

昼、近鉄電車に揺られて生駒駅に着いた。案の定、少しだけ遅刻した。駅にはもう既に出演者たちが集まっていて、談笑しながら皆でケーブルカーに乗る。生駒山の中腹、宝山寺の参道沿いにある洒落た店は、一階がカフェと雑貨屋、二階がライヴ会場となっていた。自分は雑貨屋で、我が家で待つ沢蟹のかにくんのために流木を100円で購入した。山からの見晴らしは綺麗で、けれども頭の中はまだ寝呆けていた。素敵な土曜の昼下がりで、甘いチョコレートでもあれば更に素敵だったと思う。本番前、何となく、やろうとしていたネタを取り止めて、違うものにしよか、となった。お客さんは沢山来ていた。みどりのひ、という名のライヴで、みどりのひ、という雰囲気のライヴであった。無事にライヴが終わり、お疲れ様ー、なんて言って外へ出ると、まだ夕方だというのにもう暗い。このまま帰るのも勿体無いと、出演者のうち二人を連れて宝山寺までの坂道を歩いた。参道の店はほとんど閉まっており、人気も無い。寺の鳥居をくぐり、本堂にお参り行くか、と言うと、おもろいんですかね、と連れが言うので、別におもろくはないと思う、と言うと、まあ、もう別にええんちゃいます、と言われた。何やら音がするので振り向くと、遠く山の向こうの若草山で花火が上がっていた。決して派手では無い、可愛らしい彩りの花火だった。しばらく眺めていると、連れが、もういいっしょ、と言うので、そのまま宝山寺に参拝することも無く、来た道を下った。その後も、建物の隙間から僅かに見える花火や山焼きの様子に自分は度々立ち止まったが、やはり連れの、何がおもろいんすか、もうええですって、行きましょう、という冷酷な言葉に従い、駅まで坂道を歩き下って帰った。一人で歩けば良かった、と思った。

何もいりません。舞台に来てください。