金縛り

昨晩、金縛りにあった。結構疲れていたのだろうか。ライヴを終えて、帰宅して、深夜のことであった。布団に入ってからおそらく一時間ほど、気持ち良く眠れそうな頃合いになってきた頃、カタカタと部屋が揺れて、ア、地震だ、と思った。大きめの、ちょっと危ない感じがして、だが今思うとそれは夢だったのかもしれぬ。仰向け状態のまま全身が揺らされているような感覚に陥り、自分は意識の中で、早く逃げなければ、と焦るのだが、身体は動かないし目も開かない。揺れ動きつつも、瞼が鉛のように重たくて、手も足も微動だにしない。やがて汗が噴き出して、思い切って頭を動かそうとするが、やはり動かぬ。力の入れ方が分からないのだ。脳内思考では、あかん一旦落ち着け大丈夫大丈夫、はい落ち着きました、それじゃせえので動くぞ、ふうふう、せえの、みたいな感じで、そしたら首が横に傾いた。そして、右腕がほんの少しだけ動いた。重い瞼もゆっくりと開いたのだが、すぐにまた閉じる。また無理やり開くが、やはり閉じてしまう。何というか、眠すぎてフラフラになるときの最上級といった状態で、でも地震やし、やばい、けど起き上がられへん、あかんもう無理、と一旦またダウン、妙な体勢のまま布団に貼り付いた。息はしている。けれども、自分の身体ではないような、コントロール出来ない感じである。夢か現実かよく分からぬまま、意識だけが浮遊する。いつの間にか揺れは収まっていた。もう一度気持ちを整えて、手、足ともにゆっくりと動かせるようになった。良かった、と思って、落ち着いて目を開く。また瞼が落ちてくるのを堪えて、今踏ん張るとき!と目を見開き、思い切って布団から上半身を起こした。すかさずテレビを付けたが地震速報は無く、すぐに消して、そしたら頭がずんと重たくなり、くるくる目が回って、壊れたあやつり人形のようにまた布団に倒れた。大丈夫大丈夫、と深呼吸しながら、ウォンバットやチョコボールやあの娘のことを想像しながら、再び眠りについた。

金縛りの最中は焦りと不安で一杯なのだが、後で思い返すと、身体が全く動かない感じをもっと楽しんでおけば良かった。おそらく何年かぶりの、金縛りでした。

何もいりません。舞台に来てください。