春の夜は寒い。自分はその辺りのことをちゃんと知っている。まだ毛布は必要だ。それに、自分は未だに外出の際にはコートを着てマフラーを巻いている。祖母がくれた青いマフラーはどこかに失くしてしまった。このベージュ色のマフラーは、確か高校生のときに叔母さんが買ってくれたものだ。よく考えたら自分はこの歳になっても、自費でマフラーを買ったことが一度も無い。実は、鞄も自費で買ったことが無い。全てを貰い物で済ませてきた。恥ずかしい話である。明るくて優しかった叔母さんは、二年前に精神を患って、それからは一度も会ってくれない。

何もいりません。舞台に来てください。