台風クラブ

台風が近づいているようで、ドキドキ・ワクワクする。去年も大型の台風が来た。街中の民家がどんがらがっしゃんする中、我が店はまったくの無傷であった。少しがっかりしたのだが、実は、屋上へ通ずるドアのガラスが滅茶苦茶に割れていたようで、それを見た自分は、大いに喜んだ。

夜になり、風が窓を叩きつける音を聴くと、決まって「台風クラブ」を思い出す。日本の、古い、青春映画である。自分はこの映画が非常に好きで、もう何度も見た気がする。

台風によって、家に帰れず、学校に閉じ込められた学生たちの物語。一見、80年代の青春映画的なタッチだが、何かがずっとおかしい。劇中に流れる「もしも明日が…」という曲がまた良い。台風が来て、過ぎていき、雨あがりのグラウンドの湿っぽい空気。大人になることを拒む中学生たちの、夢と狂気と悶々が、ここぞとばかりに爆発していく。そしてそれらが行き着く先は、確かな「阿呆」であった。

内に秘めたる様々な感情の爆発。それらを引き起こすきっかけが、台風である。あくまで台風はきっかけに過ぎないのだが、しかし、ここは台風でなければならない。台風だから良いのだ、と自分は思う。とにかく最高の映画である。

自分は、年齢的には、青春も思春期もとうに終わってしまった。日常では、感情が爆発することも無く、あくまで冷静な日々を送っている。暴力を振るうことも無ければ、大きな声を出すことも無い(昔からほとんど無かったが)。

しかし本来は誰しも、ティーンエイジャーの頃と同じく、夢も狂気も悶々も、心の中にきちんと存在しているはずである。そこに年齢は関係無い。大抵の人は、大人になるにつれて、それらを閉じ込める蓋が分厚くなり、ある程度落ち着いた、常識的な人間になる。滅多なことでは蓋は開かない。肉体も弱って、合理的な思考とともに、面倒臭さが打ち勝つことも多い。台風?危ないから家にいましょう。しかし自分は、なぜか台風が来ると、決まって落ち着きを失う。あの頃のドキドキが蘇り、蓋が飛んで、意味も無く夜中に外へ出る。そうして自転車で爆走しながら、一人で高揚してしまう。あいっするっひっとよッ!ビョエエ、と叫びながら、風に吹かれて。楽しいよ。

ちなみに、雨、雷、雪、地震などでは、大して高揚しない。なぜか、台風だけが好きなのだ。早く来ないかな。

https://m.youtube.com/watch?v=RezSMh0lnnU

何もいりません。舞台に来てください。