アルバイトをせずに暮らす方法

我々にとって、もっとも脅威なるものは生活である。何せ、明日も明後日も我々は生活せねばならない。一切の生活を捨てることは不可能なのだ。そして、誰しもが思う。好きなことだけをして、楽しく暮らしていければどれだけ良いか、と。これは究極のロマン。しかし自分は断言する。はっきり言って、そんなものは、無い!

大人が生活をするためには金がいる。金を手に入れるためには仕事をしなければならない(令嬢、御曹司、などは除く)。つまり、生活をするためには、基本的には仕事をしなければならない。ほな好きなことだけを仕事にすれば良いじゃんね、となるのだが、仕事となると、好きなことだけではなくなる。誰かが言っていたのだが、やりたいことは金を使ってやるもので、金を稼ごうとすると途端にやりたくないことが増える、と。

自分は今、漫才をしつつ、ライヴ喫茶を経営している。それで細かな金を稼いで、暮らしている。どちらも楽しい仕事である。それでもやはり、面倒臭いことがある。たとえば銀行へ行ったり、役所へ行ったり、皿洗いをしなければならない。漫才でも、舞台以外の場面では、諸々の連絡や打ち合わせ、時には媚びた真似もしたりと、面倒なことは多々ある。それでも生活のために、やりたくもないことも、やる。

ロマンを捨てろと言っているわけでは無い。ここで必要なことは、ちょっと諦めること、である。つまり、嫌が消えることはあり得ない。ならば、嫌を極力減らす、もしくは好きを増やす、という方向へと持っていく。好きの割合が増えれば、まあこのへんで許しといたろ、と納得出来るかもしれない。勿論、満足なんぞしなくて良い。しかし、諦めることも肝心だ。どうやら、この、逃れられぬ、生活という名の鎖は死ぬまで身体に絡みつくようで、ならば少しでも錆を落として磨こうではないか、という話。

さて…。たとえば芸人でも、大抵の売れていない人はアルバイトをしながら暮らしている。自分は、とにかくアルバイトが嫌いだった。

昔、皿洗いのアルバイト中に欠伸をしていたら、「こら。欠伸してんと皿洗わんか」と叱られたことがある。何も欠伸だけをしていたわけでは無い。自分は欠伸をしながらも、ちゃんと皿は洗っていたのである。一体何が悪いのか、自分には全く理解出来なかった(未だに何故叱られたのか疑問である)。そうした理不尽なことが重なるたびに、あぁ、バイト辞めたい、と思った。

特に23歳くらいの頃は、どうすればアルバイトを辞めることが出来るか?ということを常々考えていた。呑気に欠伸だけしていたわけでは無い。ただぼんやり思うのでは無く、「アルバイトをせずに暮らす」ことを実現するために、その方法を自分なりに必死で考えたのである。そして今は、一応、自分なりの生活が成り立っている。勿論、売れてもいない漫才師、かつ、儲けてもいないライヴ喫茶、である。それでも今は、誰にも叱られず欠伸をしながら皿を洗えるようにまでなった。今回はその思考と計画をお教えしよう。

ノウハウ!大したものでは無い。「30日で1億稼ぐ方法」に比べれば、魅力も薄いかもしれぬ。ただ、もしも、今の生活に不満がある人や、何かを変えたいと思っている人、また、アルバイトや労働が嫌でたまらない人、面白いことがやりたい人、などにとっては、少しくらいの手助けになるかもしれない。

と、書いたところで、お腹が空いたのでご飯を食べることにする。自分は好きな時間に好きな物を食べると決めている。そうした些細なことだけでも生活は色づくのだ。ってことで、続きはまたいつか。

何もいりません。舞台に来てください。