あたいの夢

マドモアゼル・ユーは悲しい夢を見て、ぐっすんとしていた。まだ夜明け前だった。窓を開けて冷たい空気を吸い込むと、悲しみも少しはマシになった気がした。やって来た雀と話す。空は薄暗く、ほんのりと紫色をしていた。「早起きは三文の得も無い」早起きしすぎても暇だしやること無いし、別に良いことなんて無い、という意味さ、ねえ雀、分かる?って言っても雀はちゅんちゅん鳴くばかりで何喋ってるのか分からない。あたいのビスケットあげようか、とポケットから砕けたビスケットを取り出して窓辺に置くと、雀はつついてついばみ満足そうであった。

普段は息をするように嘘ばかりついてるマドモアゼル・ユーだが、これからは出来るだけ素直に生きようと思った。彼女には大切な夢があり、それは、悲しくも虚しくも薄暗くもなくて、とても明るくキラキラとした夢だった。大切だから誰にも言わず胸に仕舞っていたのだが、何となくそんな気分だったのだろう、雀にその夢を語って聞かせた。語りながら、何だか子供じみているような気もしたが、雀は黙って聞いてくれた。…って調子、それがあたいの夢さ、叶うかどうかは分かんないけどね。雀は羽を広げて飛んで行った。そうしてくるりと空を迂回して舞い戻ると、マドモアゼル・ユーの顔まで近付き、春が来ますよ、と言ってまた飛んで行った。

何もいりません。舞台に来てください。