なまくらの道

毎日チョコレートを禁止にして野菜中心の食生活プラス夜のジョギング、という決まりを設けたのはもう随分前のことで、かねてからの三日坊主はその健康的な暮らしをしっかりと三日で終えた。さぞ無念を浮かべているのか、というと、そうでは無い。ボテンとした醜い腹をさすり、今日から筋トレしよっかな、などと言いつつ、もしゃもしゃチョコレートを平らげていて、無念どころか反省の欠片も無い様子である。

自分は昔から、興味のあることや好きなことに対しては、人目も憚らずに邁進し、スピーディーに行動してきた。思い立てば躊躇無く動く。たとえば、歌おう!となれば、すぐにマイクを握るし、ハンバーグ!となれば、次の場面ではもう挽肉をこねた。ライヴ喫茶!となれば、次の年にはもう開店していた。

こう言うと、なんて行動力のある人、ステキ、と世の女子らは瞳を煌めかせるかもしれぬが、実際のところ、自分は極度のなまくら者でもある。二日酔いの三日坊主の四日市である。物臭懶惰の怠け者。興味のあることには邁進できる反面、どうでも良いことや、やらなければならない義務、については丸っきり駄目で、それはもう赤子猿の如く何も出来ない。

先日ぐうぐう寝ていたら、電話。こんな昼間に何の用件だと出れば、保険会社の人で、あのう、今日の14時にそちらのお店に伺ったのですが、おられなくて…、と言われて、ハッと気付いた。14時に店で打ち合わせ。確かにそう約束していたのである。すんません、ちょっと、あの、忘れておりました、と寝呆け眼で正直に謝った。後日改めて伺いますので、と別日程を決めて、自分はきちんとメモをした。そうして後日、またしても電話で起きた自分は、ア、ええと、…ほんまに今日でしたっけ?といった体たらく。

人として、大人として、当たり前にやらなければならない(とされている)こと。それは日常においても同じで、たとえば、朝きちんと起きる、夜寝る前に歯磨きをする、洗濯物を畳む、飲んだ後のコップを台所シンクに持っていく、外したコンタクトレンズを洗う、書類を保管する、といった当たり前のことが、自分はまるで出来ない。朝は起きれず、歯磨きをせず寝る夜もある、洗濯物もコップも放ったらかしで、コンタクトレンズは洗わずそのまま容器に入れて、書類は散らかっている。それ以外にも、欠品した日用品を買いに行かない、手続きのための役所へ行かない、貯金が出来ない、メールの返信を忘れる、ツタヤの返却を忘れる、物を異常に失くす、約束を忘れる、遅刻する、爪切り耳掻き鼻毛切りを放置する、といった具合で、世間一般の生活レベルに比べれば、はっきり言って終わってる。情けない。世の女子らも、ダッサ、と白い目で舌打ちをするだろう。

32年も生きてきて、未だに正しい暮らしが分からぬ脳と身体。三日坊主なんぞ、自分にとっては朝飯前なのだ。あぁ、しかし、この生活はいつまで続くのか。人生は三日どころでは無い。明日こそ、と言いながら、なまくらの道は続く。

何もいりません。舞台に来てください。