ナナちゃん

「とある旅館での営業漫才を終えて、浴衣を着た自分は楽屋として用意された和室でゆっくりしている。相方は先に帰ってしまった。そこへ三人組の明るいギャルたちがやってくる。先ほどの舞台を見ていたようで、握手など求められる。自分も悪い気はしない、が、何せ相手がギャルなので少し緊張もして、寡黙になる。ギャルたちは一通りぎゃあぎゃあ騒いだ後、部屋を出て行く。一人になった自分は握手した後の手のひらをこっそりと嗅いだ。淫乱な香水の匂いがした。

するとギャルの内の一人、ナナちゃんという子がまたしても部屋に入ってくる。髪の毛は灰色のロング、化粧は濃い目で、白のパーカーを着ている。どうやら自分に好意があるらしく、ツーショットの自撮り写真が撮りたいと言うので、撮る。そのとき矢鱈と顔を近付けてくるので、自ずと興奮したのだが、至近距離で喋るナナちゃんの口が蟹の甲羅のような臭いがしたので、萎える。ナナちゃんはいくつなん?と聞くと、え~引かんといてな~37歳。と言われて、そうなんですね、と敬語に変える自分であった。

撮った写真を見せて貰ったのだが、そのときナナちゃんのスマホに入っている他の写真が何枚か目に入る。そのどれもが自分の写真であった。舞台写真だけで無く、何故かプライベートな写真まである。実は前から好きやってん、と寄り添ってくるナナちゃんであったが、自販機で缶珈琲を買う自分の写真まで撮られていたので、怖くなる。ナナちゃんは自分の手を取り、乳にあてがう。乳は柔らかいのだが、口は臭いし、よく見ると顔も化粧で誤魔化しているだけで、お婆さんのような皺だらけである。ナナちゃんは上目遣いで、する?と言ってきたが、すんません、しないです、と断ると、性病ちゃうであたし、と言ってナナちゃんは笑う。いや、ちょっと、そういう問題じゃなくて、と言葉を濁すと、ナナちゃんが怒り出して、いつかあんたのこと訴えるから、と言って部屋を出て行く。

気を取り直して風呂でも入ろうと思い、タオルを持って大浴場へと向かう。廊下を曲がったそのとき、顔面白塗りでハサミを持ったナナちゃんが立っていて、びびる。逃げ惑う自分を追いかけるナナちゃんは、追いつくと、笑いながら浴衣の裾をハサミで切ってきた。これ弁償せなあかんのかな、などと呑気なことが頭によぎる。キングダムって漫画読んだことある?シマナカっていうキャラ出てくるんやけど、速攻殺されんねん。あんた、どうする?とナナちゃんに脅されて、読んだことないです、いっぺん読んでみたいんで、殺さんといてください、と答える自分であった。」

誰かに殺されそうになる夢は久しぶりに見た気がする。ナナちゃんの乳の感触と口臭は、夢の中ではあるが、確かに感じた。起きた後もしばらく呆然とする悪夢であった。

何もいりません。舞台に来てください。