さよなら、ぼくらのUFO

夏の夜の公園を歩いて、会話をして、誰もいないサーカス小屋を覗いて、メロンパンを食べて、炭酸の抜けたコーラを飲んで、汗ばんだ。暗闇に生い茂る木々の向こうからトランペットの音色が微かに聞こえてくる。こんな夜中に、誰かが練習しているのだろう。ぼくらは公園を何周も歩き続ける。大切なことをなかなか言い出せないきみは、いつの間にか俯いていた。飲み切ったコーラのペットボトルを捨てるために、ぼくはゴミ箱を探す。そうしてまた、冗談、冗談、冗談を重ねて、園内を歩き回った。やっと見つけたゴミ箱にペットボトルを上手く放り投げたぼくは、きみに向かってふざけたポーズを取った。そのとき、あのね、と言ったきみの頭上に何かが光ったから、ふたりして夜空を見上げた。

不思議な緑の光線はどこまでも伸びていて、貧乏なぼくらを嘲笑うかのように、あれはきっとUFO、びゅんびゅんと飛び回っていたから、先程までの会話など消え去ってしまった。

あれは遠い夏のこと。いつの間にか退屈な奴になったぼくは、スマホの光に目を痛めながら暮らしている。あれは遠い夏のこと。あれは確かにUFO。いつかまた会えたらいいねと思う。

何もいりません。舞台に来てください。