5番

今日は競馬カードという遊びを皆でやった。1~8番まで馬の絵が描かれており、それぞれ予想をして、スクラッチすると着順が出てくる、というもの。カードは20枚くらいあった気がする。

皆、最初は何となく馬の顔の好みで選ぶ。私は少し口を開けて空を見上げている、とぼけた感じの5番が可愛くて、そいつに賭けた。皆それぞれ、こいつ可愛いとかこいつ早そうとか言いながら予想した。スクラッチすると、私の予想した5番は2着だった。

そうして何レースかやるうち、(全て単なる運ではあるのだが)やはり皆数字の理論や過去の傾向を踏まえて予想をするのと同時に、ロマン的思考も加味して楽しむことを覚える。つまり、それぞれに推しの馬が出来るのだ。勝とうと負けようと私は2番に賭けます、と言ったり、3番推しですけど今回は違う子で、などと言ってはしゃいでいた。時には誰かの推しを横取り予想して揉めたりもした。私も何となく、毎レースの度に5番が気に掛かるようになってきた。しかし5番はいつまで経っても1着にはなれず、初めに2着になったきり、せいぜい3着、ほとんどが着外だった。あるときは誰かが5番予想をするのだが、やはり外れた。もうええ、5番はもうええ、と私も憤慨していた。次はフラットな頭でもう一度改めて馬の顔で選ぶわ、と言って、番号部分を隠して顔を見て選んだら、やはりそれは5番だった。でも5番勝たれへんしなあ、とぼやいていると、一緒にやっていた子が、きっと5番は嶋仲さんのことが好きなんです、と言ってきた。これはロマン的思考ではなく、統計的にそうなのです。つまり、ここまで15レースほどしてきましたが、誰かが5番を予想したときは、まず着外です。そして5番が3着以内に入ったときは毎回嶋仲さんが予想しているときです。つまりこの子は嶋仲さんに予想されるときだけ頑張って走るんです、今のところ勝ってはいないのですが、でも、そういうことなんですよ。そのとき、5番の顔が心なしか赤らんだように見えた。

残りカードは僅か3枚となっていた。その3レース全てに、私は5番予想を入れた。着外、着外、そして最後のレース、5番は遂に初の1着となった。スクラッチで5の数字が見えたその瞬間、感極まった私は、ごば~ん!おれの愛が通じた!とガッツポーズで涙を流した。そのとき初めて私は気付いた。5番がおれのことを好きな以上に、おれが5番のことを好きだったんだ。何故か知らんが財布が少し薄くなったような気もするけど、そんなことより大切な愛を知れて嬉しかった。


何もいりません。舞台に来てください。