ロボ・ギャングW4H

ロボ・ギャングのW4Hは、いつものように愚連隊の仲間たち、G5XやMNO69らと、夜の街へと繰り出した。ガソリン・バーで飲んでいると、途中、CGC先輩がやって来た。その姿にW4Hたちは驚いた。何と、CGC先輩の耳から金のボルトが飛び出ているではないか。それだけではない。顎の辺りはチェーンで巻かれているし、へそにはプラチナ・ボルトが埋められている。最高にクールなCGC先輩だった。皆が羨望の眼差しで見つめていた。どうやら最近、マシン・シティの百貨店裏に改造屋が出来たらしく、そこにいけばチューン・アップ出来る、今の流行はやっぱりチェーンだぜ、ほら、触ってみるか?などと言って、全員にチェーンやボルトを触らせて周るCGC先輩は、矢鱈と調子に乗っていたが、それでもやはりクールには変わりなかった。

次の日、W4Hは早起きしてマシン・シティへ行った。あいにくの雨であった。そして、無念にも改造屋は閉まっていた。夕方17時オープンと書いてある。W4Hはこういうときに横着して下調べもせずにとりあえず現地へ行こうとする自分の不甲斐なさを恥じたが、溜息もそこそこにモニター・フォンを取り出すと、すぐに近所の美味しいラーメン屋をエキストラ・サーチで検索していた。前向きな奴である。噂のラーメン屋で、今度は行列に並んで、W4Hは大盛りのつけ麺を食べた。この店は魚介豚骨ラーメンが名物で、W4Hも勿論、魚介豚骨ラーメンを食べるつもりでいたのだが、行列に並んでいるうち、季節限定のつけ麺に惹かれて、己のセンシティブ・フィーリングを信じることにした。そして、つけ麺は美味かった。ご機嫌になったW4Hは、百貨店のCD屋で普段は聞かぬインダストリアル・ミュージックを試聴したり、地下街の饅頭屋で土産の饅頭を買ったり、バーチャル・セルフ・セックスをしながら、ひたすらに時間を潰して、一応17時20分まで待った後、満を持して再び改造屋へ行った。しかし、改造屋の店主いわく、今日は予約で一杯なので、予約してから後日また来るように、と、これには流石に落ち込んだW4H、肩を落として饅頭片手に帰宅した。

後日、W4Hは見事な改造を施した。口と股間にはジパング文字の一種であるカン字やカタ仮名をタトゥー・アップし、更には銀のチェーンを両目玉から鼻へと繋いで、己の名字でもある「W」をあしらった。お洒落改造である。が、そのせいでどこか笑っているように見えるため、ギャングとしては少し滑稽であり、仲間たちからも笑われてしまった。おまけに麻酔の副作用でヒート・ショックを起こしてしまい、イエロー・シップ・テープを額に貼られて、それもまた皆から馬鹿にされた。それでもW4H自身は、何だか生まれ変わったような気分で、新しい自分を受け入れることが出来たし、何よりも、そんな自分を誇りに思うことが出来た。

何もいりません。舞台に来てください。