ヤング寄席

少し仮眠して、朝起きたらもうやべえ、急いでワーシャー浴びて、準備して、出発して、大阪駅へ行き、バスに乗り込み東へ行く。バスは快適な3列シート、のはずが、後ろにいる人に配慮して自分は背もたれを少ししか倒すことが出来ず、結果、眠りたくても眠れない。身体をねじり二の腕に首をもたれて不自然な体勢のまま、揺られる。携帯のネットで、ヤフー知恵袋を見たりしながら時間を過ごす。Q、昨日買った豚肉が所々青く腐食しているようなのですがまだ食べられますか。A、おそらく腐っているので食べるとお腹を壊す恐れがあります。なんてくだらないQ&Aを見ながら。年末なので渋滞、ようやく東京に到着して中野の劇場に着いた頃には、出演者は皆揃っていて、遅れてすんませーん、なんて言いつつ、ライヴのリハーサルや着替えを済ませているうちに、本番を迎えた。

「ヤング寄席」というタイトルの主催ライヴで、オファーして出てもらった出演者は、皆それぞれ狂気に満ちていた。クリスマスだというのに、野蛮なネタの数々で、虹の黄昏を筆頭に、怒号が飛び交い合って、オダウエダ、八田荘、大陸、べっこちゃん、と、全員が面白かった。我々は、2本、漫才をした。狭苦しい小屋で、お客さんもぎゅうぎゅうに座って、さぞかし疲れたに違いないが、最後まで楽しんでもらえて、感謝しかない。総合司会のフルーツぴ~ち大将軍様には、今一度、敬礼である。良いライヴだったと思う。東京に来た際は、また「ヤング寄席」をやろう、と決めた。

お疲れ様ー、なんて言ってそのまま小屋で打ち上げ、缶ビールや缶チューハイを飲みつつ、くだらない聖夜を過ごして、小屋の人に、そろそろ出て行ってください、と真顔で怒られて外に出れば、夜風が冷たくて思わず笑う。皆で、かまぼこ体育館氏おすすめの、中野の中華料理屋になだれ込み、とりあえずシュウマイ3つね、なんて言いつつ麦焼酎ボトルで乾杯して、餃子、唐揚げ、肉と芋の炒め、焼飯、五目焼き蕎麦、角煮丼、など食べたが、どの料理も有り得ないほどに美味くて、全員が奇声をあげながら貪り食った。焼酎ボトルももう一本下ろして、たらふく食って会計すると、一人1200円、と有り得ないほどに安く、東京には何度も来ているが、初めて良い店に出会った気がした。素敵なクリスマスだと思った。今日は平日で、世間の人々は年末の仕事に追われていたり、受験勉強で煮詰まっていたりするのだろう。そんな中、シュウマイを食べて満面の笑顔の自分は、何と幸せ者だろうか。ジーザスに感謝するしかない。

夜も更けて、お疲れ様ー、と皆が散り散りになり、自分は一人新宿の安宿へ向かおうと切符を買ってふらふら改札に入った。すると、電光掲示板が消えている。今さっき終電が無くなりました、と駅員が真顔で言う。出たよ。やはり、災難に巻き込まれたよ。せっかくのクリスマスが台無しだよ。自分は再び改札を出て、夜の中野の街、ひとりぼっちになってしまった。

とりあえず適当に歩いたが、新宿は見えない。東京は大きな街だ。当たり前だ。あてもなく歩き続けて、そのうち冷静になり、自分はタクシーに乗った。なけなしの金を払って、夜中に安宿に到着した。クリスマスだというのに、安宿の大浴場では汚れたおっさんたちが汚れを落としている。喫煙所。先ほどの笑顔はどこへやら。自分は真顔でこの文章を打ちながら、舌打ちが止まらない。

何もいりません。舞台に来てください。